文と写真:藤田りか子

去年の終わりぐらいから、ラッコの状態がよくなくなり、その奮闘記については犬曰くにいくつか記事を載せたので(以下のリンクを参照)、読者のみなさんの中にも覚えている方が多いはずだ。


あれから9ヶ月。驚くなかれ、ラッコはまだうちで元気に暮らしている。今朝も、ラブラドールズをフィールドに連れて、トレーニングしていたのだが、ラッコはミミチャンのブラインド用に茂みに隠したダミーをことごとく拾い上げては、見事にトレーニングの邪魔をしてくれた。そして、「自分にもボールを投げろ、投げろ」とうるさくまとわりついてくる(以前のように「マテ」が効かないのは、老害であろう)。
「うるさい、面倒臭い」
をラッコに感じれば、それは彼が元気である証拠!と私はカッレと笑い合った。
しかし、彼は後肢が非常に弱っているので、ダッシュさせてボールを取らせるという遊びはやらせない。そのかわり、茂みにボールを隠し、それを探してもらうというゲームを何回かやった。サーチしているラッコはとても熱心で、あと4ヶ月で14歳になる犬にはとても思えないほどだ。
単なる高齢による衰えではなかったのかも
昨年の暮れでは、もう次の春すら持ち堪えるのは無理だと思っていたし、当然、2026年の夏はラッコがいないのだろう、とすら想像していたものだが、この変わりよう!
そして、つくづく思うのだが、今回ここまで回復した要因としては、やはりリブレラの注射をやめたことが大きかったのではないかと。リブレラを打っていた頃は、定期的と言っていいほどラッコは何らかの炎症を起こしたり、嘔吐したり、胃けいれんを起こしたりと、本当にトラブル続きだった。そんな悩みをFacebookのとあるグループに書いたら、アメリカの獣医師が
「それは、リブレラのせいではなく、あなた自身が周期的にストレス状態になり(おそらく生理周期と関係しているのでは)、そのストレスが犬にも伝わって、犬の体調まで悪くなっているのではないでしょうか。」
なんてコメントをもらったものだ。「いやいや、更年期も終わったおばさんですから、PMSなんてとっくに卒業していますけど」と返信したくなったが、それはぐっと飲み込んだ。しかし、リブレラのせいではないかもしれない、偶然かもしれないと思いつつ、こうして時がたったのだが、一つはっきり言えることがある。
リブレラをやめてから今に至るまでラッコは一度も体調を崩していない。
当時は毎月のように獣医へ通っていたのだが、最近では、あれほど頻繁に通っていたことが懐かしく思えるぐらい病院とは縁がなくなった。もし、あの頃の不調が単に高齢による衰えだけだったのなら、その後も少しずつ悪化していても不思議ではない。ところが彼の場合、どんどんよくなっているのだ。もちろん、後肢の衰えは年齢相応に進んでいる。それでも、全身状態は以前よりずっと安定し、むしろ元気になっている。あの頃はどんよりとしていた目も、今ではまるで若犬と変わらないぐらいキラキラしている。とくに一緒にフィールドへ出て、テニスボールを見せると!
最近では、獣医師の考え方にも少し変化が出てきたようだ。この間、以前ラッコにリブレラを勧めていた獣医さんが、
「リブレラも効く犬と、そうではない犬がいますね」
と話してくれた。
「ああ、やっとそう言えるようになったんですね」
と、私は内心思ったものだ。
これだけSNSで大きな議論になり、さらにリブレラの副作用について報告した論文もいくつか発表されるようになった。獣医師としても、「リブレラですべての痛みが解決する」と言い切ることもできなくなったのだろう。これはいい傾向だ。そして、本当にリブレラが非常によく効き、副作用もなく経過している犬もいる。たとえば、私の友人が飼っている13歳のゴールデン・レトリーバーはその一頭だ。現在もリブレラとリマディールを併用し、痛みをうまくコントロールできているという。
介護疲れ?
ラッコがよくなってから実はというと、私の方が介護疲れというか、介護者燃え尽き症候群のような状態になった。彼の容態がよろしくない頃はとにかく気持ちが張り詰めていて、不安の中にいながら、毎日必死に戦っていたものだ。
そしていざラッコが回復し、大きな心配事がなくなったにもかかわらず、今度は私の気力がなかなか戻らなくなってしまったのだ。あれほど好きであったドッグトレーニングの方もおろそかになりつつあった。それが、さらに自信を失わせていった。そのために、本来なら申し込むはずだった競技会の予定を見落とし、春には参加の機会を何度逃してしまったことだろう。唯一は友人が、1月にいっしょに申し込んでくれていた5月の大きな競技会だった。
そして、この大会でミミチャンが60組中の準優勝を果たした。これで私は大きく自信を取り戻すことになる。ミミチャンはしっかり競技をこなし、自分もハンドラーとして冷静に判断しハンドリングを行った。おかげでそれが結果につながった。どんよりしていた私の脳は「やっぱりできなくなったわけではなかった!」という新しい確信を得て、一気に活気を取り戻した。これぞ自己効力感なのだろう。
その後は、ありがたいことに何もかも明るい気持ちで犬と過ごせるようになった。ラッコも元気だし、自分のトレーニングにも再び張り合いが出てきた。やはり長く行き詰まってはいけないのだな、と今回つくづく。もちろん友人が競技会に誘ってくれたことが、何より大きな転機になったのだが。
だからこそ、もし行き詰まりを感じたら、ほんの少し勇気を出して、あえて何かに挑戦してみるべきだろう。これはきっと今後の人生の教訓にもなりそうだ。
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