文:尾形聡子

[photo by Ravi Sharma]
世界に目を向けると、特定の飼い主を持たず、人の生活圏で自由に暮らす犬たちがたくさんいます。こうした犬は「ビレッジドッグ(Village dog)」あるいは「フリーレンジ犬(free-ranging dog)」などと呼ばれており、世界中の犬の約80%を占めているといわれています。本記事ではそのような犬たちを「フリーレンジ犬」と表記します。
インドでは、そんなフリーレンジ犬たちが日常的な町の風景の一部になっています。商店の前で昼寝をしたり、人の横を歩いたり、市場や路地裏を自由に行き来したり。狂犬病や咬傷事故、繁殖管理など深刻な社会問題も抱えてはいますが、それと同時に、人と犬がごく自然に同じ空間で暮らしている社会でもあります。
日本でも、一昔前には地域によって似たような光景が見られました。特定の飼い主はいなくても、人の暮らしのすぐそばで生活する犬たちです。現在の日本でそのような環境を見る機会は少なくなりましたが、世界に目を向けると、それは決して珍しいものではありません。
なぜ研究者たちはフリーレンジ犬を研究するのか
現在、犬の認知や行動に関する研究の多くは、家庭犬を対象に行われています。当たり前のようではありますが、

