文:尾形聡子
[photo by Sarah Shull on Unsplash]
突然ですが、皆さんは幽霊の存在を信じていますか?
幽霊をはじめとする心霊現象や、テレバシーや予知能力、生まれ変わり、透視など、非科学的な現象である「超常現象」。信じるか信じないかは人それぞれですが、文化的背景や宗教、国の経済レベル、教育レベルなどによっても左右されると言われています。
先日の藤田りか子さんの記事「犬と会話、アニマル・コミュニケーターの世界をのぞいてみる」もまさに超常現象のひとつ、テレバシーを使うアニマル・コミュニケーターのスピリチュアルな話でしたが、その世界について、うまい具合に非科学を科学しようとしている研究論文が発表されているのを見つけたので、今回ここで紹介したいと思います。
藤田さんと同様、私もスピリチュアルな世界にはまったく縁もなく、そのような能力も皆無ですが、世界中どこでもいつの時代にも超常現象は語られてきているもの。なので、その存在を完全に否定することはできないとは思っています。
亡き愛犬に対してもある、絆の継続
アメリカのメリーランド大学のコンピュータサイエンティストであるジェニファー・ゴルベック博士は、親しい人や家族を喪った人がその幽霊と出会うことがあるのと同様に、今や家族の一員として捉えられ、強い絆で結ばれる犬においてもそのような体験をする人がいるのではないかと考えます(故人との絆の継続:Continuing bonds)。そこで、SNSを通じて、「愛犬を亡くされた方で、愛犬の幽霊を見たり、サインを受け取ったり、愛犬があなたとコミュニケーションをとったりした経験はありますか?」という内容の問いかけをしました。
解析に適切だったコメント回答544件についてゴルベック博士は主題分析を行いました。主題分析(Thematic analysis)とは、質的データの分析手法のひとつで、質的なデータを読み解き、データのパターンを探し、重要なテーマを見つけるものです。
その結果、「身体的な相互作用」と「それだと解釈された相互作用」の2つの大きなテーマに分類されることを見つけました。
「身体的な相互作用」は回答中の315件において報告されており、亡くなった犬の幽霊を見たり、触ったりするという感触を伴う遭遇のことです。直接的に犬の幽霊を見るだけでなく、犬が一緒にベッドに横たわっているのを感じる、犬の鼻が触れているのを感じる、犬の歩く爪の音を聞く、犬の声を聞くなども含まれます。たとえばこのような回答がありました。
我が家のローズ(15歳半のゴールデン)が亡くなった翌朝、私はリビングルームに出た。彼女がソファの横の床で丸くなっているのが見えた。そして5~7秒後、彼女はゆっくりと消えていった。私は、彼女が私に大丈夫だと知らせてくれたのだと確信している。
[photo by Pongmoji]
もうひとつの「それだと解釈された相互作用」は回答中の264件において報告されており、これは犬の幽霊と直接遭遇したりしたわけではないが、犬の幽霊が関係していると飼い主が解釈したものです。夢に犬があらわれたり、犬の霊が関係していると考えられる何らかの兆候(虹や蝶など)を見たりするなどです。
私たちがエリーを亡くしたとき、彼女が亡くなってから1週間後、まさにそのとき、彼女のお気に入りのくつろぎ場所だった予備の寝室の煙探知機が鳴り始めた。
544件のうち134件の回答では、このような超常現象についてどのように感じたか、詳細な説明が書かれていました。それらを再度主題分析したところ、「ポジティブな感情」「複雑で悲しい感情」「メッセージ」の3つのテーマが特定されました(下図参照)。
[image from AnthrozoösFig3]
青色部分は「ポジティブな感情」で(上から慰め、安心、守り、ギフト)全体の大部分(74.6%)を占めていました。
私は夜、ベッドに入るときにいつも違う振動や鳴き声を聞く。それは私に安らぎを与えてくれる。
ついでオレンジの部分は「複雑で悲しい感情」(上からほろ苦さ、切なさ、不気味さ)で、ネガティブな感情に属するものです(8.7%)。
今年の2月に私の愛犬のゴールデンを亡くしてから、数ヶ月にわたり亡くなった彼女の夢を見ている。夢の中ではとてもリアルな思いがして、目が覚めるたびに彼女がもういないという現実に気づき、毎朝心が引き裂かれそうになるような気持ちで悲しく目覚めていた。
3つ目「メッセージ」は緑色の部分(様子を見にきた、挨拶しにきた、別れを言いにきた)になります(16.7%)。
去年の9月、私たちは13歳のゴールデンを安楽死させなければならなかった。私は心を痛め、今もなおその悲しみに苦しんでいるが、それ以上彼女を苦しませることはできなかった。家に帰ると、とても美しいモンシロチョウが私に近づき、そして飛び立っていった。あれは彼女がお別れを言っているのだとわかった。
心理学の分野において、幽霊を見ることは否定的で不適応とされることが多く、そこには罪悪感や責任感も関わってくると言われているそうです。しかし今回の研究結果において、亡き犬に対する超自然的な経験の多くは悲嘆に暮れる飼い主にとってポジティブな経験であり、罪悪感や悲しみを和らげる重要な慰めとなる可能性があることを示唆するとゴルベック博士は述べています。
また、そのポジティブな可能性についてより深く研究すべきであり、特にこのような幽霊体験と心的外傷後成長(非常に困難な人生の危機との闘いの結果として起こる前向きな変化の経験:心的外傷後成長については以下の記事を参照ください)との関連を調査すべきだと考えているそうです。そして、文化や宗教、性別、個人のバックグラウンドなどを超えてこのような亡き犬に関わる超常現象を研究することで、そのような体験が飼い主に与える影響をより理解できるようになるかもしれないとのことです。
[Image by kristianainley from Pixabay]
亡くなった犬と飼い主の関係にスポットライトを当てたこのような研究は非常に珍しいものですが、この研究を読んで、今は亡き愛犬との超常現象を経験したことのある人は決して少なくないかもしれない、むしろ一般的なのではないかなと思いました。かくいう私も、幽霊にこそ会ったことはありませんが、「あ、これは犬たちが導いてくれたんだ」という感覚を直感的に抱いた経験は何度かあります(今回の研究の「それだと解釈された相互作用」の方になります)。むしろ、幽霊となってあわられてくれるのなら会ってみたいとすら思ってしまいました。
皆さんは、亡き愛犬との超常現象を経験したことがありますか?そして幽霊となった愛犬と再会したいと思いますか?
【参考文献】
【関連記事】