文と写真:藤田りか子
狩猟誌『けもの道2020春号Hunter’s sprinG』。鳥猟犬のアシカも読んでるよ!
昭和の頃、犬に関するマガジンはかなりマニアックなものだったと記憶している。平成に入り犬ブームがきて多くの犬雑誌が刊行された。内容は確かに「しつけ」や「お手入れの仕方」など役に立つ情報に溢れていたものの、どれも似たり寄ったりの一般的な内容がほとんどで、ちょっと物足りなさを感じたものだ。
ところが犬を犬としてマニア的に知ることのできるマガジンが実は日本に存在していた。それはな〜んと狩猟雑誌の世界で繰り広げられていたのだ!狩猟といえば、犬。犬といえば狩猟 。そう、世界にいる何百種という犬種の半数以上が狩猟犬としての起源を持つ。
「けもの道」(三才ブックス)という季刊(春&秋号)マガジンである。編集長であるSさんご自身もDNAに狩猟の血が合成されるよう書き込まれているかのような腕利きの狩猟家であり、狩猟犬愛好家。「けもの道」はそんなSさんの思いをそのまま誌面に反映させた記事に溢れている。狩猟における犬の役割をとても大切に考え、犬と人との共同作業を最大限にクローズアップ。
今発売中の「けもの道」の2020春号では、特集の一つが「猟犬と歩く日本の実猟」。誌面に登場するのは、イノシシ猟に活躍する本川系四国犬、そして南国プリミティブ系スピッツの雰囲気ムンムンのスラリとした九州地犬、はたまた実猟にて活躍するラブラドール・レトリーバー。イノシシ猟の猟犬猟能競技会なども取り上げられ、狩猟に活躍する犬たちの作業、性能、そして地方における独特の犬の使われ方などが網羅されている。まさに日本の狩猟犬生態学大図鑑!犬というのは人と自然の交わりの中で作られる「動物文化財」と信じている。犬をもっと深く知りたい人にとって「けもの道」は読み応え抜群、もうひとつの犬マガジンと言える。
表紙は私の友人であるポントゥスさんとヘラジカ猟につかわれる愛犬のノルウェージャン・エルクハウンドがモデルになってくれた。
今号には筆者の初寄稿記事もあるのでお見逃しなく!スウェーデンからの狩猟犬の事情、主に狩猟犬をめぐる倫理について述べている。ヨーロッパ、特に北ヨーロッパ諸国は狩猟倫理が高く保たれている。一般の人々の間でも狩猟が支持されているのは、ハンターの間におけるモラルの高さゆえである。狩猟犬はツールではあるが、それだけではない。気持ちを分かち合える大事な狩猟友達でもある。日本でももっと狩猟犬への倫理が広まってほしいと、そう願いをこめて執筆した。
本誌全体を通して感じたのは、猟における大事な考え方、つまり犬との作業や自然を読んだり対峙することの面白さや深さなどを真面目に探究し、その楽しみ方を読者にアピールしているということだ。最近はかっこよさに憧れて自然に対する倫理観も持たずルールも守らず、ほぼゲーム感覚ではいってくるハンターが多いと聞く。いや、狩猟のカッコよさとは、「撃った〜、快感!」とかSNSで見せびらかす写真だけが全てじゃないよ。じゃ、どう楽しんだらよりカッコよく深みに入ることができるのか?そんな道案内がほしければ、まずは「けもの道」を辿りながら…。よろしく!
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