犬のルーツは2系統〜10万年にも及ぶハイイロオオカミのDNA解析により明らかに

文:尾形聡子

[photo by wikimedia] ノルウェーの動物園にいるハイイロオオカミの亜種、ヨーロッパオオカミ(ユーラシア大陸に広く生息)。

犬の祖先はオオカミ。

過去にはオオカミ以外にもジャッカルやコヨーテなどとの混血も祖先として含まれていると言われていたものですが、今では多くの人がこのように認識するようになっています。しかし、最大の謎ともいえる、「ハイイロオオカミが、いつ、どこで、どのようにして家畜化されたのか」についての答えには諸説あり、やれ東アジアだ中東だ、複数地域だなどと研究者たちの意見が一致していない状況が続いています。

犬の祖先であるハイイロオオカミは、数々の大型肉食動物が絶滅した後期更新世(氷河期)も生き延び、北半球の各地域に広く生息していました。その時期の間、少なくとも15000年前までに家畜化されたというのは共通した意見とされていますが、遺伝学的には4万年前にも遡る可能性があるとも言われています。

このように、今もなお犬の家畜化の起源については謎のベールに包まれたままです。そこで、イギリスのフランシス・クリック研究所が率いる大規模国際研究グループはこのベールを取り払うべく立ち向かいます。研究グループは、古代のハイイロオオカミの遺伝的多様性を詳細に調べることで、どの地域の集団が犬ともっとも近いDNAを持っているかを明らかにできれば、犬の家畜化の起源に近づくことができると考えたのです。

オオカミゲノム、10万年の変化を追う

研究者らは、ヨーロッパ、シベリア、北米の16カ国で発掘された66個体の古代オオカミのDNA配列を新たに解読。研究での解析対象にはこれまでに解読済みの古代オオカミのゲノム5個体分が加えられました。また、コーカサス地方の古代ドール(イヌ科の一種で、現在は中央アジアや東南アジアなどに生息)のゲノム配列も解読して使用されました。これらの古代オオカミ、古代ドールの生息時期は10万年前までにわたっていました。そして、古代オオカミのデータと、現代生息している世界中のオオカミ68頭、現代の犬369頭、古代の犬33頭とその他イヌ科動物のゲノムとを比較解析しました。

10万年というスケールでのオオカミゲノムの変化、そして犬の進化をゲノム解析した結果、まず、古代オオカミは現代のオオカミと比較して、

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