文:尾形聡子

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遠吠えといえばオオカミ。そんな印象を多くの人が持っていると思います。遠吠えはオオカミにとって重要なコミュニケーションツールで、遠く離れている群れのメンバーの場所を特定したり、見知らぬオオカミとの接触を回避して縄張りを維持するための機能を持つと言われています。また、遠吠えは一頭で発せられる場合と、集団で合唱する場合とがあります。
遠吠えの研究はもっぱらオオカミを対象として行われており、家畜化を通じて変化した犬のボーカルコミュニケーションについての研究は限られています。中でも異なる犬種の発声行動を比較した研究は2000年に発表された論文のみで、そこでは、アラスカン・マラミュートやクライナー・ミュンスターレンダーなどオオカミと同等の発声レパートリーを持つ犬種がいる一方で、プードルやアメリカン・スタッフォードシャー・テリアなどの犬種では発声レパートリーが減少していると報告されています。そのほかの研究では吠え声のみを対象としており、古くから存在する犬種は限られた状況のみでしか吠え声を使わない、すなわち滅多に吠えないけれども、近代に作出された犬種においては過剰に吠えることが示されています。
犬の遠吠えの研究は限られていますが、分離不安などに関する研究において、遠吠えはほとんどの犬種の発声レパートリーに含まれていると報告されています。また、2022年に発表された研究では、遠吠えの頻度には犬種差があり、遠吠えと関連する遺伝子座が2つあることが示されたことから、遺伝的な要因が関係することが示唆されています。
ハンガリーのエトベシュ大学の研究者らは、今までほとんど行われていなかった犬の遠吠えについての謎を解明すべく、本当に特定の犬種が遠吠えをしやすいのかどうか、また家畜化による影響を検証するために、オオカミとの遺伝的な近さとの関係性を調べました。
どんな犬が遠吠えをしやすいか
研究者らは、犬の現在の生活スタイルにおける遠吠えは、縄張りを示したり群れのメンバーとのやりとりに利用するなどオオカミにとっての主要な機能を失っていると考えます。ただし、遺伝的にオオカミに近い古くから存在する犬種においては、近代に誕生した犬種と比較すると行動的にオオカミとの類似性が見られることから、遠吠えそのものを理解し、強く反応するだろうと仮定して実験を行いました。
実験は、犬が部屋の中で自由に動ける状態にしてオオカミの遠吠えの録音(一頭吠えとコーラス吠え)を3分間聞かせ、その反応を観察するというものでした。実験室という犬にとって不慣れな場所でオオカミの遠吠えを聞くことから、縄張りを守り侵入者を排除するシグナルとして認識されると想定します。このような時、オオカミであれば遠吠えで応答することで群れを抑止する、あるいは、静かに逃げるという2つの戦略を取ることが知られているため、犬も同様な戦略を取るだろうと研究者らは考えます。ただし、今回の実験は小部屋で実施されたため、犬は静かに逃げる代わりにあくびをしたり唇を舐めたりなどのストレスサインを発したり、飼い主の方へ歩み寄って安心感を得ようとする行動をするだろうと予想されました。
実験に参加したのは1〜12歳の28犬種68頭の家庭犬で、そのうち17頭が古代犬種(柴犬、秋田犬、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート、シー・ズー、ペキニーズ)でした。
実験の結果、39頭の犬が遠吠えに対して声を出して反応をしました。遺伝的にオオカミとの距離が近い犬種ほど、オオカミの遠吠えに対して独自の遠吠えで長く反応し、オオカミとの遺伝的距離が遠い近代の犬種ほど、遠吠えではなく吠え声で反応をしていました。また、ストレス行動は古代犬種においてより多く見られ、近代犬種で8.3歳以上の犬では大幅にストレス行動が少ないことが示されました。年齢に関しては、古代犬種においてのみ、5歳以上の犬に有意に遠吠えでの反応が見られたこともわかりました。
犬種と年齢だけでなく、性差と不妊化手術においても遠吠えとの関連が見られました。去勢をしたオスは



