エネルギーと犬 (1)

文と写真:アルシャー京子

我が家のベランダに毎日リスがやってくる。厳しい冬を越すことができるようにと私達は餌場に落花生や胡桃を置き、それをリスは食べに来るのだ。秋に溜め込んだ体脂肪もそろそろ底がつきつつある今頃が野生動物にとっては一番厳しい季節である。

冬を前に体脂肪を貯める方向へと代謝が動くのはリスや馬だけではない、オオカミも同じ、そして私達の愛犬にもいえることなのだ。

というわけで、今回から数回にわたりエネルギーの話についてお話しよう。

はるか昔に学校の家庭科で習っただろうエネルギー源となる三大栄養素、炭水化物・タンパク質・脂質。これらの栄養素をこの順番で体は利用してゆく。

運動の種類とエネルギー源の関係は「タンパク質と犬 (4)」でお話してあるのでそちらをご参考いただくとして、ここでは身近な話「カロリー消費」から話をしてゆこう。

カロリーとは体で消費される熱量エネルギーの単位。どれだけ体を動かすときにどれだけの熱量(カロリー)が消費されるか、あるいはナニもしないでただ寝ているだけだけど体の中で食物を消化したり心臓が動いたり呼吸をしたり、はたまた体温調節や頭の中でいろんなことを考えたりするときにどれだけのエネルギーが消費されるか、これを少し掘り下げてみよう。

体を維持するために必要なエネルギー量

犬がナニもしていない(安静な)状態でもエネルギーは消費される。体内の代謝を維持するために必要とされるエネルギーは体重10kgの成犬の平均で2.9MJ(メガジュール)、これをカロリー単位に計算しなおすと約700kcal(キロカロリー)といわれている。

仔犬や若い犬では代謝が盛んなためもう少し多めの3.15MJ=753kcal、そしてシニア犬では代謝も徐々に衰えるので消費エネルギー量も少なくなり2.36MJ=564kcalとなる。一般的にエネルギーの消費量は年々2%ずつ減少し、7歳を超えるとさらにそれが加速しシニア犬で消費されるエネルギー量は若い犬の約75%ほどになる。

体重別エネルギー所要量の平均(H. Meyer/J. Zentek著『Ernährung des Hundes』より)。体の多少の動きに対する消費量はすでに含まれている。

なるほど、これを目安に食餌量を調節すればいいのだな、と思うだろう。ところがそう簡単には問屋は下ろしてくれない。

いわゆる「ラテン系」な性格や短毛犬種・外飼いされている犬では上記に挙げた数字よりもエネルギー消費量は高くなり、逆に感情表現の少ない大人しい犬や長毛犬種・暖房のよく効いた室内で飼われている犬ではエネルギー消費量は少なくなる。

例を挙げてみよう。犬にとって快適とされる温度は長毛犬種で15-20度、短毛犬種で20-25度といわれ、北方産の犬(ハスキーなど)では10-15度が快適温度の最低とされている。仮に短毛犬種が快適温度22度から冬の戸外4-5度に出たとき、体温調節のためにエネルギー消費量は60%上がる。

その逆も然り、犬の快適温度をはるかに超えた30度以上の環境では体温調節にパンティング(急速呼吸)を伴い、これまた多くのエネルギーが消費されるのだ。

そんなこんなで上記に挙げたエネルギー消費量はあくまでも平均に過ぎず、実際には年齢のほかに犬種や性格・飼育状況に健康状態などを加味し、平均値の53-124%までエネルギー消費に差があるという。

うむむ、ナニもしない状態でもこんなにエネルギー消費量に差があるなんて、考えるだけ無駄な気もしないでもないが、ここはぐっと我慢して次回に続く。

(本記事はdog actuallyにて2010年2月9日に初出したものをそのまま公開しています)

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