タンパク質と犬 (4)

文と写真:アルシャー京子

肉といっても種類は様々。どの肉が犬の体に合い、利用されるのか。それはまた犬種の歴史にも関係してくる。

さて、健康な犬であれば充分量以上に摂ったタンパク質は、体内で文字通り血となり肉となり、またエネルギーにも変換される。

犬種によっては元々ハードな使役条件に耐えるよう改良された歴史があるため、家庭犬として飼われている場合、必要以上に取りすぎた炭水化物はすぐに脂肪に変換・蓄積されやすく、成分の50%前後を炭水化物が占める市販のフードでは太りやすい傾向に陥るのも無理はない。

その点タンパク質はエネルギー源として利用されながら過剰な量は脂肪には変換されないので、「(炭水化物を含まない BARF などの)生食に切り替えて痩せた」という理由はここにある。

「良質のたんぱく質」とは?

巷ではよく「良質のタンパク質」というが、それが一体何を意味するのか?知らなければただ耳に聞こえがいいだけになってしまうこの言葉。

犬にとって質の良いタンパク質とは、農薬・薬物・雑菌などの「衛生的品質」とは別に犬の体が必要とするアミノ酸をほどよくカバーしているものを指す。

タンパク質はアミノ酸が繋がって出来ており、そのアミノ酸のうち体の中で作ることが出来ないため必ず食物などから摂らなければならないアミノ酸の事を「必須アミノ酸」と呼ぶ。必須アミノ酸が不足すると、その先のタンパク質合成が制限されるため、代謝に歪や無理が生じる。

また必須アミノ酸は体内の特に皮膚や消化管、肝臓などの永久的な代謝(新陳代謝)においてタンパク質合成の基礎となりとても重要な役割を果たすほか、成長期の仔犬や仔犬を抱える母犬(妊娠中および授乳中)においてはこれら必須アミノ酸需要が高まるため、さらに意味合いは高まってくる。

さて、タンパク質源には動物性と植物性の二つがあり、動物性タンパク質(つまりは肉)は牛肉・馬肉・鶏肉・魚類とそれぞれ種も進化の度合いも違った動物達をすべてひっくるめ、植物性のタンパク質では大豆やトウモロコシがその代表、それぞれタンパク質を構成するアミノ酸のバランスが異なってくる。

犬の体を作り上げるに当たり、動物性タンパク質ではすべての必須アミノ酸需要を充分含んでいることは想像に易く、一方トウモロコシではリジンやスレオニンといったアミノ酸が不足する。しかし、これが同じ植物性タンパク質の大豆では(バリン以外)ほぼ充分カバーされており、さすが大豆は「畑の肉」といわれるだけある。

良質といわれるタンパク質食材と犬の体のアミノ酸構成を比較。

これらのアミノ酸構成を踏まえたうえで、さらに体内での消化性をあわせ「良質のタンパク質」は順位付けされる。

また良質の肉を生で摂ることは、乾燥肉に比べ自然の消化プロセスが進みやすく、乾燥や加熱で細胞が壊されていない分、細胞内物質も自然な形で体内に取り込まれ有効利用されやすい。

生の細胞には化学分析などでは表せない未知の大自然が詰まっているのだ。

たくましくスタミナのある体を作る

筋肉は使えば増えるが、使わなければ増えてはくれないのは当たり前で、たくましい体づくりはまず運動からということに。

しかし肉を食べれば食べただけ筋肉が付くというほど体は単純ではない。むしろ肉ばかりを摂り過ぎて体に負担をかけることだってしばしば。

そこで体のエネルギー供給システムから考えると、少なくとも10-20%程度の炭水化物を食餌に加えることにより、タンパク質が筋肉を作る前にエネルギーとして利用されるのを防ぐことが出来る。つまり程よい筋肉は程よい炭水化物の供給と組み合わせることで効率よく出来上がるというわけだ。

しかも運動時間が1時間以内の犬であるならば、なおさら炭水化物というエネルギー源にはメリットがあることになる。


エネルギー供給源別集中度と運動時間の関係。ドッグレースなどのスピード競技で瞬発力に必要なのは筋肉に蓄えられたATP、数分間にわたるレトリーブ競技やアジリティなどにはグリコーゲンとグルコース(ブドウ糖)などの炭水化物が中心、そして長時間の緩やかな運動では脂肪とグリコーゲンさらにアミノ酸がエネルギー源として利用される。愛犬に合った食餌選びは運動と深い関係にあるのだ。

タンパク質の話をするととどまるところを知らない私。大雑把に駆け巡ってみたが、何だか一人で突っ走っている気もしてきたので、ここらでまずは一区切りということに。

みなさま、お疲れ様でした。

(本記事はdog actuallyにて2009年1月27日に初出したものをそのまま公開しています)

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