タンパク質と犬 (3)

文と写真:アルシャー京子

いぬは肉が大好きだ。放っておくといくらでも食べる。やはり肉食だな、と思う。

タンパク質は摂り過ぎても大丈夫?

タンパク質の摂取が不足するとまずは免疫系に障害が現れるが、ではタンパク質を充分量以上に摂り過ぎるとどうなるのか?

人間ならば通風に罹りやすくなる。犬ではどうだろう?

実は、健康な犬では(ダルメシアンを除き)充分量を超えても別に不安を抱える必要はなく、むしろ運動量が伴っていれば体は筋肉を作り上げることが出来る量のタンパク質を得ることになる。これが犬が使役目的であればあるほど体作りに必要な量、つまり「タンパク質と犬 (1)」でいう「使役や運動に耐えるのに必要な量」にあたる。

しかし、体に入ってきたタンパク質は消化管でアミノ酸に分解された後、肝臓に運ばれ、そして必要とされない量のアミノ酸は分解され腎臓を通して排泄されるため、量が多くなるにつれ肝臓と腎臓へ負担が掛かることは明らかである。

それが一体どのくらいの量を超えると障害が出るのか?残念ながら今のところたしかな数字はない。

タンパク質の全体的な許容量は犬種や運動量により異なってくるので、基本的には充分量を目安に、あとは運動量に従って少量増やし、そして定期的な健康診断などを参考に飼い主自身が食餌内容を調整するのが望ましい。簡単に言えば、充分量を10-20%くらい超えた量のタンパク質を摂っていても、毎日適度な運動をこなし、健康診断の検査値に異常が見られなければ OK ということだ。

そうだ、20%といえば、長毛犬種の換毛期にはタンパク質を20%程度増量することが望ましい。それほど換毛はタンパク質を消費し、新しい毛を作る一大行為なのである。

毎日の運動量にあわせてタンパク質の必要量が充分量を超えるのはあくまでも筋肉増加のため。しかし、多く与えれば与えるほど筋肉が付くというものでもない。自転車引き運動で1時間走ったところで充分量の30%増しほどもいらないのだ。1時間以上の運動の際には別のエネルギー源(脂肪)を選ぼう。

また母犬の場合、仔犬の健やかな成長のために妊娠後期には充分量の1.4-1.7倍量(仔犬の数による)、授乳中には実に3-5倍量ものタンパク質が必要とされることも追記しておこう。

それでも気をつけるべきなのは?

肝臓や腎臓疾患が既往症にある犬・高齢犬(現役引退犬)などでは多すぎるタンパク質の供給は良い結果を招かない。充分量を上限として与えよう。また投薬(駆虫剤を含む)などにより肝臓の処理能力に負担がかかっている時にも充分量を超えないことがまずは療養食の前提になるので、健康診断等で肝臓機能の検査値が疑わしい場合、まずはタンパク質の量を目安ほどに調整し、また肉を良質のものに切り替えて肝臓の回復を待つことをオススメしたい。

おっと、忘れちゃいけない

タンパク質は主食にだけではなく、おやつにも含まれる。主食であるドッグフードや手作り食に含まれるタンパク質量にばかり気を取られ、おやつに含まれるタンパク質を無視していると、思いもがけず多くのタンパク質を与えているという結果にもなる。特に乾燥肉などを愛犬のおやつにしている場合は必ず考慮されたし。

ダルめし選び

犬の中でも珍しいスポット(斑点)を持つ犬種ダルメシアン。珍しいのは見かけだけでなく、その体質にもある。

通常犬の体の中で消化されたタンパク質は尿酸という物質を経て尿素に代謝される。しかしダルメシアンの肝臓ではタンパク質の代謝物質である尿酸の運搬システムが遺伝的に充分機能しない。そのためダルメシアンのおしっこには尿酸が多く含まれ、水に溶けにくい尿酸が結晶を作り、結石を起こしやすい体質となっている。

とはいえ、ダルメシアンにとってもタンパク質は必要な栄養素。尿酸はプリン体という物質から作られるため、同じタンパク質量でもこのプリン体をできるだけ少なく含む食材を心がけなければならない。プリン体は魚・内臓肉系>肉・豆類>鶏卵の順に多く含まれているので、ダルメシアンのフード(=ダルめし)選びはどうぞ慎重に。

次回は「エネルギーと良質のタンパク質」について

(本記事はdog actuallyにて2009年1月23日に初出したものをそのまま公開しています)

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