エネルギーと犬 (3)

文と写真:アルシャー京子

さあ、今回はフードとエネルギーの話。

愛犬にあったエネルギー量探し

世の中にはいろんなフードが売られている。大手のものからノー・ネーム製品まで、原料品質・栄養バランス・価格の前評判はさておき選び抜いたフードのエネルギー量がどの程度愛犬に合っているか、結局は実際に与えてみなければ分からない。

フードのパッケージについている成分表を見てみると、同じ成犬用フードでもフード100g中に含まれるエネルギー量はメーカーによってずいぶん異なる。パッケージに表記してある体重ごとの推奨給餌量を参考に体重10kgの犬の摂るエネルギー量を数社のフードで比較してみたところ、いわゆる日本でよく売れているフードはほとんどが一日の所要エネルギー量(体重10kgで753kcal)を下回る結果だった。

売れ筋のフードを愛犬が食べていて、推奨給餌量を守りつつ少々のおやつの量なども考慮したうえで理想体重が長期で維持できているならば、計算上では足りないように思えてもエネルギー供給量があっているということだ。前々回にも話したとおり、一日の所要エネルギーには多少の体の動きがすでに計算のうちとされているから、成犬用の標準フードを食べて太るということはよっぽど太りやすい体質であるということ、裏を返せば燃費が良く本来たくさんの運動量を必要とする体ともいえる。ラブなどが良い例だろう。

理想体重については犬の体重を5段階に分けた評価表「ボディコンディションスコア」を用いて、飼い主自身が愛犬の体型についてある程度把握できる。これらを参考に今の愛犬の体型をまずは把握しよう。

ちなみに、これらのボディコンディションスコアの中に「理想体重」などとあるけれど、サイトハウンドやマスチフ系といった犬種においてはこの限りではないことは知っておきたい。

また小型犬になるほどエネルギー消費が激しいため、小型犬用フードでは大型犬用フードよりも100gあたりのエネルギー量が高めに設定されているのが普通だ。体重の増減・維持を目的とする際、これら同じ成犬用のフードをうまく使い分けて目的を達成することも出来る。

ライトフードで太る?

肥満傾向にある愛犬の体重維持あるいは体重減少をしたいと思ったとき、多くの飼い主が手にするのがライトフードである。

しかし、2010年にアメリカ獣医師会ジャーナル(Journal of AVAM)から発表された論文「Evaluation of calorie density and feeding directions for commercially available diets designed for weight loss in dogs and cats.」によると、市販されているライトフード44種類の含有エネルギー量は1日の安静所要エネルギー量(resting energy requirement: RER)を中心に73%から147%までの幅があるという。

1日に必要なエネルギー量の約7割というのならまだ消費者の「ライトフード」に対する期待に少し答えているといえるだろうが、1.4倍なんて期待どころか騙しに近い。

そう、ただカロリーが低いというだけでは何の指標にもならない。カロリーが低いのは同じメーカーの標準フードに比べて低いのであって、決して他社製品よりも低いといっているのではない。よくある「当社比」というやつ、これがちょっと曲者で要注意だったりするのだ。

残念ながら現在のところライトフードに対する基準といえばアメリカ飼料検査官協会(AAFCO)の「標準フードに比較してエネルギー量が低く設定されているもの」というくらいしかなく、ライトフードの中には100gあたりのエネルギー量は標準フードよりも10-20%低いものの、推奨給餌量を与えると他社の標準フードよりも摂取カロリーが多くなってしまうものがいくつかある。AAFCOでは今後のライトフードの基準について現在検討中らしい。

ライトフードは同じメーカーの標準フードと比べて最も体脂肪として蓄積されやすい粗脂肪の量が少なく、また消化されずにかさ増しの役目を果たす粗繊維質とそしてどんなに摂っても脂肪にはならない粗タンパク質の量が増やされているのが普通だ。まずはフードの中の高カロリー源である脂肪量を減らすことで、いとも簡単に総カロリー量は減らされているのだ。

ここで気をつけたいことがひとつある。

いくつかのメーカーのライトフードでは標準フードよりも粗タンパク質量が低いものがある。粗脂肪量が減らされているのはいいとして、粗タンパク質量までもが減らされているものがあるのだ。これらは成分分析表の落とし穴、炭水化物が表示されていないからすぐには気が付かないが、体内で余ると体脂肪として蓄積され体重増加の原因となる炭水化物が増やされているのだ。

こういったライトフードを食べて「痩せない!」どころか「太った!」というのも納得行くはず。摂取カロリーは減っているはずなのに、「なんだか脂肪が付いてきた」という結果を招く。

また、体重維持のための給餌量と体重を減らすための給餌量は異なってくるのが当たり前で、ちゃんと考えられているライトフードならば「体重維持」あるいは「体重減少目的」のための給餌量を分けて表示してある。フードのパッケージはしっかりと読もう。

「低カロリーだからたくさん食べても大丈夫」なんてまやかしに惑わされずに、痩せたいならばまずは運動。体を動かすことで体重減少以上の喜びを犬は得ることができる。寒い冬場の運動なんて体温調節にエネルギーはいるわ、筋肉運動にエネルギーは使うわで、まさに痩せるにはもってこいの条件だ。

我が家のサルーキーといえば全くその逆、元々燃費が悪く寒さと運動でエネルギーを消耗しすぎないように供給が非常に忙しいのだった。

(本記事はdog actuallyにて2010年2月16日に初出したものを一部修正して公開しています)

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