文と写真:アルシャー京子
丈夫でたくましい体を作るのに欠かせないもの、それがタンパク質。
愛犬に健康で長生きしてもらいたいと願う気持ちから、フード選びにせよ手作り食にせよ、とにかく食材の安全性が最低条件となってきた。しかし、ここで安全が確保されるならば、では次は何を基準にするべきか?迷っている飼い主はまだまだ多いことと思う。
犬の食餌を考えるとき、基本になるのはやはり「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」の三大栄養素。これらを犬の食性から考えると、まずはタンパク質から手をつけることになる。
タンパク質と聞いて「筋肉の素」としか発想が出てこない人はもう少し考えを深めてみよう。
驚くなかれ、体中のタンパク質は24時間休む暇なく作り変えられている。目の前にいる愛犬の毛も皮膚も内臓もそして血液や骨までもタンパク質で構成されているうえ、タンパク質からなる酵素が細胞の中には所狭しと詰まっていて代謝を担っている。
犬の体を作り、代謝と免疫力を保つ大事な要素、それがタンパク質。すべての生命体の基本はタンパク質、犬の体もこのタンパク質抜きには語れない。
私たちは毎日愛犬というタンパク質の塊を撫でている、というのは言い過ぎかもしれないが、とにかくそのくらいタンパク質は体にとって重要な要素なのであり、ただ筋肉作りをするだけの価値しか持っていないのではない。
前置きが長くなったが、そんな大事なタンパク質の選び方・与え方について今回から数回シリーズでお話しよう。
犬の体の構成からすると、その大部分を占める水分の次に脂肪またはタンパク質がやってくる(カッコ内は犬種による差)。これらは犬種やトレーニング状況、栄養状態によってそれぞれ体型が異なり、例えば雑種犬などで筋肉は44%ほどなのが、これがグレイハウンドになると57%(!)にまで登る。(Meyer/Zentek著『Ernaehrung des Hundes』より)
犬の体に必要なたんぱく質の量
じゃあ愛犬の体に必要なタンパク質って一体どのくらいだろう?すぐにでも答えを知りたい飼い主は多いはず。まあまあそんなに焦らず、この先話は長いからまずはお茶でも入れよう。
さて、タンパク質の摂取量には下のような3つのカテゴリーがある。
- 生命を維持するのに最低限必要な量
- 体全体に充分行き渡る理想的な量
- 使役や運動・負荷に耐えるのに必要な量
「生命を維持するのに最低限必要な量」とは、これだけ摂っていれば最悪でも死ななくて済むという量のこと。これを下回る量では低たんぱく血症を引き起こし、体の恒常性が維持できなくなる。悪い例かもしれないが、飢餓で苦しむとある国の栄養失調の子供の姿を思い浮かべて欲しい。血清中のたんぱく質機能が阻害され、免疫機能や物質の血中内運搬が低下する。
「体全体に充分行き渡る理想的な量」は、負荷のない生活の中で犬の体が必要とするタンパク質量が全てまかなわれ、免疫機能や代謝が滞ることなく、健康をある程度のレベルで維持してゆける量のこと。少々のストレスや感染にも充分耐えられるだけのリザーブを作り、一般家庭に飼われている犬の食餌はまずここが基本になる。
「使役や運動・負荷に耐えるのに必要な量」というのは、犬の生活状況により使役(盲導犬や警察犬など)や運動(ソリ犬やスポーツドッグなど)そしてさらには妊娠・授乳中の母犬(一時的な体への負荷)など、普段よりも多めのエネルギーやタンパク質を必要とする場面において追加するべき量のことを言う。このプラスαが供給されないと体はストレスに負けやすくなるのは当然、妊娠中の母犬であれば母犬だけの問題ではなく、お腹の仔犬にもタンパク質が充分供給されず弱った個体となる。また授乳中も同じことが言え、ブリーディングの場において極めて重要なポイントである。
ここで一旦休憩、次回に続く。
(本記事はdog actuallyにて2009年1月16日に初出したものをそのまま公開しています)
【関連記事】