犬のインパルス・コントロール力アップに有効なドッグスポーツの種類は?

文:尾形聡子


[Image by danielle828 from Pixabay]

21世紀に入って間もないころに「指差し実験」が行われてからというもの、犬の認知機能を探る研究は花盛り。人の乳幼児の認知能力と比較し、犬が理解できること、できないことを探る研究が続けられています。これまでの研究から犬の認知機能には犬種、トレーニングレベル、抑制コントロール持続性モチベーション、人とのコミュニケーション力、独立した作業能力、覚醒レベル、性別、年齢、気質など数々の要因が影響し、それぞれの要因が相互に影響し合っていると考えられています。

なんといっても犬は犬種という遺伝的に異なる集団がたくさん存在する生物種。たとえば、藤田りか子さんの「「うちの犬、どんな犬?」おうちで簡単実験、愛犬の認知機能をチェック!」では、13犬種の認知能力の違いを10種類のテストを行って調べた研究を紹介しています。人と一緒に働くのが好きな犬もいれば、群れで働くのが好きな犬、あるいは単独で働くのが好きな犬など得意なことは犬種によって違いがあり、それが認知能力の違いにもつながっているようです。

一方で、認知機能には遺伝と環境どちらの影響が強いのかを調べる研究も多く行われています。たとえば、抑制コントロール力やコミュニケーション力は遺伝しやすく、記憶力や推測力は環境の影響の方が大きいといったことがこれまでの研究から示されています。さらに、作業犬か一般の家庭犬か、あるいは同じ家庭犬でもトレーニング経験があるかないかなど、日常的な環境要因も犬の認知機能に大きな影響を及ぼしています。概して家庭犬よりも作業犬が、家庭犬でもトレーニング経験が豊富な方がさまざまな種類の認知機能テストにおいて優れたパフォーマンスを発揮していることがこれまでの研究により明らかにされています。

このような認知機能をはかるテストにおいて重要な要因のひとつが抑制コントロール能力、いわゆるインパルス・コントロールです。刺激に対し、好ましくない衝動的な行動を抑制し、より状況に適した望ましい別の行動を選択する能力になります。高度に専門的なトレーニングを受けた作業犬が雑音に耳を貸さずに課された作業に集中できるのにもこの能力が役立っていますし、アジリティやオビディエンスのトレーニングをしている家庭犬がハンドラーの合図に常に注意を払う上でも重要です。

このように、トレーニングを受けることで犬の認知機能が向上することはいくつもの研究で示されていることですが、トレーニング経験の有無ではなく、経験したことのあるトレーニングの種類やトレーニングレベルによって認知能力テストの結果は異なってくるものなのでしょうか。英国のアベリストウィス大学の研究者とドッグトレーナーで犬の行動学やさまざまなドッグスポーツのジャッジなどもつとめているEmma Stoker氏が共同研究を行い、抑制コントロールを

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