BARF、骨はどうする?– 我が家の犬飯事情 その3

文と写真:藤田りか子


[Photo by 24K-Production]

我が家における愛犬BARFダイエット日記シリーズ第3弾。前回からの続きである。

注意:筆者はBARFや生食のエキスパートでもなければ、犬の栄養学に通じた者でもない。まったくのアマチュアだ。なので、ここに書いてあることを鵜呑みにしないよう!単なる経験談として読まれたい。「こんな風に自分もやってみたいけど、どうなんだろう?」と思った人はぜひその道の専門家からアドバイスをもらうように!

骨は全食事量の10%を占める

これまで内臓の話ばかりしてきたけれど、BARFダイエットの特徴は内臓だけではない。そう、骨も大事な栄養源として供給しなければならない。第一話にも書いたように、骨の部位は全フード量の10%を占める。骨を犬に与える、というのはなかなか難しい。若い犬ならいいけれど、シニア犬だと顎の力が弱っており(おまけに歯もだいぶ磨滅して)、硬い骨を噛み砕くことができない。そしてそもそも適切な骨を選ばなければならない。どんな骨が我が家のBARF食材にあがっているのか述べよう。

我が家では生チキンがメインの骨の供給源となっている。なかでも手羽と首。後者の方は普通のスーパーにあるものではなく、BARF食材を専門に扱っているショップで買う。チキンの首といえば、その周りの肉は日本で「せせり」といわれ、珍重されている。しかしスウェーデンには「せせり」を食べる習慣がないから、チキンの首にはせせり肉がついたまま売られている。そして犬はその「珍重部位」を毎日のように食べている。実はせせり肉もチキンの首も私は食べたことがないのだが、「おいしそうだな」といつも思いながら犬に与えている。いつか首についている肉をそっとそいで「せせり肉」の焼き鳥などをやってみようかと思う。


エビかと思われるかもしれないが、このヒョロ長いものはチキンの首。BARFショップでこれを10kg単位で箱で買う。

チキン部位ごとの骨の含有率

部位で骨を与えているものの、骨が1日のフード量の10%を占めるようにするには、そもそも部位ごとで骨がどれぐらいの割合で含まれているのかを知らなくてはならない。インターネットで調べたらいくつかのサイトででてきたのでここにシェアしたい。

  • チキン首(皮無し):60-75%
  • チキン手羽:45%
  • チキンもも(骨付きチキンの上の部位):21%
  • チキン・ドラムスティック:33%
  • チキン足 60%

(参考:Bone Percentages in Animal Pieces))

ちなみに、私は骨付きチキンのもも肉(およびドラムスティク)は与えていない。以前与えていたものの、もしも胃の入り口などでひかかったらいやだなぁと思い始めるようになった。それはある事が起こったからなのだがその話はまたの機会に。

骨の含有率がわかれば、あとは計算してどれだけ肉と骨を与えればいいかわかる。ラッコを例にとると、彼は1日640gの食料が必要だが、そのうちの10%を骨が占めればいいことになる。すなわち64gの骨を摂取すればOK。チキン首は一つがおよそ30g。骨の比率は75%。よって1本食べることで、30g x 75%=22.5gの骨を得ることができる。となれば、これを1日に2本から3本与えれば、必要な骨量を摂取できる。


チキンの足も骨メニューとしてくわえることもあり。骨量は60%。犬はこれをコリコリと美味しそうに食べる。チキン足もBARFショップでキロ単位で購入。

生チキンってサルモネラ菌が危なくない?

チキンの骨を与える、チキンを生で与える、ということに抵抗を感じる人は多いし、スウェーデンでも多くの獣医がやめた方がいいとアドバイスをくれる。

一方でBARF提唱者は獣医師一般についての栄養学知識についてはとても懐疑的である。

「専門的に大学で犬の食について習った人はごくわずか、そもそもクリニックでもドライフードを売っているのだから、生食よりドライフードの方をすすめるのは当たり前」

というのが言い分だ。どちらが本当のことを言っているのか私にはわからないが、とりあえず、生チキンでもうちの犬は生きている。

チキンのサルモネラ菌については、他のヨーロッパ諸国と比べスウェーデンではあまり問題にはなっていない。養鶏の際の規制が厳しいからだ。それと、BARF提唱者によると、犬の胃はとても酸が強くpH1〜2の状態だと言われている(pH1が一番酸が強い状態)。そしてサルモネラ菌が生存するにははどんなに酸が強くてもpH3.8以上必要だ。犬の胃の酸性度の強さは病原菌に対する防御手段でもある。よってサルモネラ菌は増殖できないとのことだ。BARFダイエットにしている犬は獣医知らずとも言われているが、胃の強さは生食で鍛えられており、病原菌に勝てるだけの抵抗力を持っているのだろう。

そしてチキンの骨が危ないということで、これまた骨付きチキンを与えないでという専門家が多い。たしかに調理して火を通した骨付きのチキン、いや、ありとあらゆる加熱済みの骨付きの肉は絶対に与えてはいけない。骨の構造が加熱によって変化するために、割れると先がとんがりそれが消化器を傷つける。しかし生の骨は柔らかく犬の胃で消化することができる。ただし!生食に慣れていない犬に丸ごと手羽は与えない方がいい。まだ胃が生食に慣れておらず、骨を溶かすほどの消化力を持っていない。これは先日私のBARF師匠であるピッレさんから伺ったことだ。

ゆっくりとBARFダイエットに移行するのが大事!

たまに

「BARFに変えたら、犬がひどい下痢をした」

とか

「犬が突然死した」

なんて話を聞く。おそらく、ゆっくりとBARFに移行せず、いきなり食事の全てをBARFダイエットで与えてしまったのかもしれない。胃が骨を消化できなかったことも考えられる。我が家ではドライフードからBARFに移行するまで2週間をかけてゆっくり行った。最初は食事量の10%をBARF、その後20%、30%と徐々に増やして、胃を生肉に慣れさせた(ピッレさんによると3週間かけるのがよいとのこと)。

移行期間は、骨のある部位を丸ごと与えずとも挽肉機で骨もいっしょに挽いたものを与えるとよし。我が家のラッコはすっかり生食に慣れているものの、シニアで歯がすり減っており、硬くて大きなものは食べさせたくない。なので丸鶏を買い、それを骨を含めそのまんま全て挽いたものを与えることもある。おっと、丸鶏の骨率は25%である、ちなみに。


挽肉機はBARF家庭の強い味方!チキンを丸ごと買ってきて、これで骨を含めてミンチにしてしまう。犬に安心して骨を与えられる!

スウェーデンには嬉しいことに、BARFショップに行くと、豚や牛を骨を含めてミンチしたものも売っている。ちゃんと骨の含有率も表示されている。BARF初心犬にとって骨入りミンチはとっつきやすいし、飼い主としても大きな骨がお腹で詰まるのでは、の心配から解放されるとてもいい食材だと思う。

生魚もBARFメニューに!

骨の供給源として魚を使うのもありだ。スウェーデン北部でそり犬をたくさん飼っている人が、生肉食の一メニューとして、冷凍した魚をそのまんま犬に与えていたのを見たことがある(3週間以上冷凍保存することで寄生虫を殺すことができる)。なんでも湖で夏に釣ってきたものだそうだ。日本も魚の種類が豊富なので、BARFダイエット骨供給源の一つになりそうだ。一方でスウェーデンだとせいぜい鮭ぐらいしか魚は売ってないし、にしんはすべて骨を取られた状態でパッキングされている。だから我が家ではほとんど魚を使うことはないのだが…。

ことBARFショップに関すると、ヨーロッパの方が購入できるところがたくさん存在して便利よさそうに聞こえるかもしれない。が、日本は魚でかなり贅沢ができる国だと思う。のみならず海藻もいろいろな種類が売られているので、素晴らしいミネラル供給源として使えそうだ。海の幸の豊かな国だからこそ、日本独自のBARFができるのでは?

次回はどのように日頃骨と筋肉部位の分量計算をしているかを紹介しよう!

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