犬の感情を読むときの視線の先、意識していますか?

文:尾形聡子


[photo by marneejill]

人は外部情報を得るために、その多くを視覚に頼っています。会話をしているときには、相手の顔に視線を向けるのが当たり前の世界。話の内容に加えて、相手の顔の表情から感情情報を読み取るという癖が知らず知らずのうちについています。それは、人とのコミュニケーションをとる上でとても大切な能力ですが、犬との場合には必ずしもそれで十分とはいきません。なぜなら、犬と人は感情表現の仕方が違う生き物だからです。

犬は人の感情を読み取る際、優れた鼻で「嗅げる」ことはすでに科学的に証明されていますが、それだけでなく、もちろん目や耳からの情報にも頼ります。ただし、犬は人から指示をもらうときに言葉よりもジェスチャーをより好む傾向にあることがこれまでの研究により示されていることから、人の感情を読み取るときにも言葉よりジェスチャーからの情報をより重視するかもしれない、と考えられます。

実際に、犬に写真を見せて人のどのパーツを注視する傾向にあるのかを調べた研究では、犬は人の顔ではなく、手や腕に多く視線を向けていることがわかりました。やはり、犬にとって人の手は注目に値するものなのです。それがなぜなのかは藤田さんのこちらのブログをどうぞ。『犬とのお付き合い、人の手も使いよう

そしてもちろんのこと、犬は人の顔をまったく見ないのではなく、表情にも敏感で、感情を読み取るのに目を注視する傾向があることもこれまでの研究からわかっています。

一方で、人はどうかといえば、相手が犬でもまずは顔に目を向けるのが自然の流れでしょう。しかし、同じ人であっても一般の人と犬の専門家とではその視線の向け方が異なっていたことが『無言で微妙、犬言葉』の記事中で紹介されています。以下、記事からの抜粋です。

フィンランドのAalto大学神経学生医学部のミアマリア・クヤラさんらは、fMRIを使って犬の専門家と素人の間に「犬を見る目の違い」が存在することを見事に証明した。やはり「専門家の目」というのは存在したのであった。その違いとは、専門家はまず犬の社会的行動を見逃さない、ということ。そして犬の体全体を見て判断するそうである。一方で、素人は人の社会的行動はきちんと観察していても、犬の社会的行動に関しては目が素通りする傾向があるということだ。そして目のゆくところはどうしても犬の顔の表情などで、全体ではなく部分に集中するそうである。

ちなみにこの研究においても、前出の研究同様に使われた素材は写真でした。静止画を見るときにもその対象物の状況を判断するために視線の向け方の違いがでてくるものではありますが、日常生活は切り取られた写真の状態というよりも、動きがあるのが基本です。では、実際に動いている様子を見たときに、はたしてどのような結果が犬と人それぞれにおいて導かれるものなのでしょうか。


[photo by Chuck Falzone]

感情を読むときに、人が注目する場所と犬が注目する場所

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