犬は言葉よりもジェスチャーを重視している

文:尾形聡子

[photo by Steve Goeringer]

人同士がコミュニケーションをとるときには、主に言葉というツールを使っています。そこに身振りや表情などを織り交ぜることで、言葉に含まれるメッセージをより強く相手に伝えたり受け止めたりしていますが、そのような視覚的な要素は社会の中で成長しながら身につけていき、無意識的に使われていることが多いものです。

では、犬が人の意向を受け取ろうとするときには、人の発する言葉とジェスチャーのいずれを重視するものなのでしょうか。逆にいえば、人が犬に何かを伝えたいときには言葉とジェスチャーのどちらを使ったほうが効果的なのでしょうか。イタリアのナポリ大学の研究者らにより『Animal Cognition』に発表された研究によりますと、犬はジェスチャーによるキューをより好んで選択していることが明らかにされました。

実験には13頭の犬と飼い主が参加。まず、犬が3つの物品の名前を識別し、選別して持ってこられるようトレーニングを受けました。そして、“モッテコイ”を①ジェスチャーと言葉の両方、②ジェスチャーのみ、③言葉のみ、の3つの状況下でトレーニングを受け、最終的に、言葉もしくはジェスチャーのそれぞれに対して同様に成功できる犬9頭(ミックス5、ラブラドール、ジャックラッセル、ダックス、ポインター各1)が実験に参加しました。

トライアルではこれらの3つの状況に加え、バイ・モーダル(別個の2のアプローチ)の不一致として、④飼い主は持ってくるものをジェスチャーで指示するが、言葉では別の物品の名前を言うという状況でのテストが行われました。

①~④それぞれ8回ずつのトライアルを行った結果、④バイモーダルの不一致の条件下では、9頭中7頭の犬が偶然を超える確率(73.6%)でジェスチャーの指示を選択し、2頭はランダムにいずれかを選択していました。しかしすべての犬が、偶然以上の確率で言葉のキューを選択することはありませんでした。

さらに、各4つの状況下でのパフォーマンスを比較してみると、①ジェスチャーと言葉の両方を使う場合と④両方使うが不一致の場合に比べて、ジェスチャーもしくは言葉のみ使用した場合には反応が遅くなることが分かりました。

これらの結果より、犬は言葉もしくはジェスチャーいずれかによるキューに対して同等に反応できるが、ジェスチャーによる視覚的な指示をより選択する傾向があると研究者らは結論しています。また、この結果は同研究者らにより2016年に発表された研究結果を確証するものとなりました(詳しくは『言葉のキューvsハンドシグナル、犬はどちらを重視する?』をご参照ください)。

[photo by Steve Baker]

ナポリ大学の2つの研究が示したように、犬にきちんと指示を伝えるためには言葉とジェスチャーの両方を使うのがベストであること、そして犬はよりジェスチャーを重視しているということを頭の片隅に置いておきたいものです。特に高齢犬が増えている現在、加齢に伴い耳が遠くなっていく状況において、ジェスチャーによる意思疎通がより多くはかれることはとても大切なことだと思います。

また、先日の藤田さんの記事『犬の心理、「後ろに退がる」の美』にありましたように、犬はボディランゲージを読むことに長けた生き物で、人同士ならばまったく気にならないようなわずかな動作にも敏感に反応するものです。日常生活の中で、自分の体の動きや癖、ジェスチャーの取り方を少し意識して、愛犬と対話する時間をつくってみてはいかがでしょう?

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【参考サイト】

Psychology Today

【参考文献】

Should I fetch one or the other? A study on dogs on the object choice in the bimodal contrasting paradigm. Anim Cogn. 2017