クロスブリーディング– 北欧における遺伝的多様性と犬種健全性維持への挑戦

文と写真:藤田りか子

純血犬種の健全性が危ぶまれている。それが大衆の知るところとなったのは、今から15年前、2008年に制作された英国BBCのドキュメンタリー番組「犬たちの悲鳴~ブリーディングが引き起こす遺伝病」(日本での初放映は2009年)が放映されたことによる影響が大きいのではないだろうか。番組では、ある犬種に見られる「誇張された身体的特徴」は人為選択繁殖によるグロテスクな奇形にすぎないことを指摘。それゆえ引き起こされる疾患や障害の状況を映し出していた。短頭種の不健全さはまさにその一つである。これについて今や世界中の研究者が論文を出し、大衆に警告を出しているのは周知の通り。犬曰くでも何度か記事にして発表をしている。記事のリストはこちらを参考に。

しかし純血種が危機的状況にある最たる原因は他にもある。近親交配が進みすぎ遺伝子の多様性が失われているという事実だ。これが何を意味するのか、それは尾形聡子さんの記事「ほとんどの犬種は遺伝的に危機的状態?近親交配に関する大規模研究より」にて記されているのでぜひ読んでほしい。

このような話を聞くと

「だから純血犬種なんて反対なのよ。あれは所詮自分のステータスシンボルのためでしょ?」

なんて声が必ずあがってくるものだ。だが犬種の起源は贅沢品を作ろうとする意図ではなかったはずだ。つまり最初は機能ありき。ソリ犬、牧羊犬、狩猟犬、そして家庭で飼いやすいが「目的」であるコンパニオンドッグは何百年も前から存在していた。いやソリ犬に関しては9000年前から犬種が存在していた。そしてそれぞれの職場に適した犬種がいたからこそ、都市での犬との生活が可能になっている現在がある。それについては「保護犬ミックスはOK、でも純血犬種はNG」にて詳しく述べている。

都市化した現代という時代において、人が犬と調和をとって暮らすために、やはり犬種の存在は大事なものだと思うのだ。ならば、どうやって遺伝子の多様性が失われた犬種の現在の危機的状況を救えるのか?「純血性」や「ピュア」を大事な価値観として標榜してきた世界のケネルクラブも、ここにきてようやく動き始めた。

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