老犬に真新しい楽しみをつくる

文と写真と動画:尾形聡子

タロウが亡くなり4ヶ月がすぎた。

お別れした直後から少し経った後のハナの様子についてはこちらのブログに書いたとおりだが、その後、ハナの元気はみるみるうちに失われていった。犬が人と同じように死というものを理解しているか、感じているかについては想像しかできないが、やはり今でもまったく同じとは思っていない。けれど、元気の失いようからしてタロウのいない日常を決して喜ばしく思っていないのは確実だと感じている。

タロウ亡き後の4月にハナも16歳を迎えた。いつもタロウのそばで元気いっぱいのハナだったが、あちこち体にガタが出てきている。タロウがここに居ないという現実が、気持ちの上での張り合いを失わせ、ハナの老化を加速させているようにも思う。大好きだった散歩も出かけるときには喜ぶものの、外に出ると遠くには行きたくないとそこかしこで踏ん張り、なるべく早く家に帰ろうとする。散歩中にモチベーションを上げようとあれこれ試すもなかなか乗ってくれないままでいる。

歩みもぐんと遅くなった。それまでは競うようにしてタロウより前を歩きたがっていたのに。が、それは体の不調も一因であることがわかった。後肢を引きずって歩いている音がするようになり、特に左後肢にナックリングの症状が強く出るようになってしまったのだ。モチベーションが下がっている散歩のときは、より一層その引きずりが頻繁になる。しかしその一方で走るだけの体力もあり、やる気があるときには短距離ではあるものの調子よくウキウキ走ることもある。

どうにかしてこんな日常に風穴をあけたい。しかし外だと難しい。ならば家の中でできる、これまでにやったことのない真新しい何かをしようと考え始めた。タロウと結びつかない、ハナだけの楽しみをつくるためだ。さてどうしよう。犬曰くにはノーズワークの手引きがたくさんある。本格的にやらずとも、ゆるい感じで始めてみようか。

そう思って挑戦してみるも、残念なことになかなかうまくいかなかった。主原因は床に置いてあるオヤツを食べないことにあった。それまでタロハナには床に落ちたものを勝手に食べないようにさせてきた。狭い部屋の中、余計な争い事は極力避けたかったのが大きな理由だ。だから、鼻でオヤツを探し出しても、床に落ちていると食べない。食べたいけれど食べない。探し出したところでつまらないし、探すモチベーションも上がらないというわけ。

どうしたものかと藤田りか子さんに相談したところ、まずはこれを部屋の中でやったらどう?とアドバイスをもらった。部屋の床にフードやおやつをばら撒いて、犬がそれを探して食べるという遊びだ。詳しくは以下のブログをご覧いただきたい。

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当然のことながら、床にばら撒いたフードを食べていいよ、と伝えても、これまでのルールと違うことにハナは大いに戸惑っていた。とはいえ食欲だけは衰え知らず、ご飯前のお腹が一番空いているときにゆるりと続けていたら、1週間もするとほとんど躊躇することなく探して食べるようになった。次に、床だけでなく少し高さがある場所にもフードを置くようにしてバリエーションを増やしていった。ハナの中で、部屋の床にあるおやつを探して食べるという「遊び」が楽しみとなっていくのが感じられた。

そこからノーズワークへ移行せず、先日の藤田さんのこちらの記事、ストップシグナルの練習へと繋げてみた。床に楽しみが落ちているという、床おやつ探しで得ることができたモチベーションを利用してみたのだ。

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ストップシグナルの練習は、ハナのやる気を一気にヒートアップさせてくれた。タロウが亡くなって以来のやる気モードを目の当たりにし、私の方があまりにも嬉しくて大興奮してしまった。それにしてもなんと喜ばしいことだろう。老犬でも真新しいことを覚えられるし、おまけに部屋の中だけでも十分に楽しめる!

ちょっと欲が出てきて、ストップシグナルを外でも試してみたくなってしまった。しかし、目が悪くなっているためか、おやつが私の手から放られるのが今ひとつしっかり理解できていないようだった。なので、外では代わりにボールを使うことに。

ストップシグナルの練習を開始して1週間くらい経った頃の映像がこちら。若いときに比べたら理解は遅いかもしれない。けれど、老犬でもやればできる!楽しめる!!

老犬に新しいことはもう…と諦めずに、老犬と暮らす方々にはぜひ新しいことに挑戦してみてほしい。私自身、諦めかけていたというか、ハナの急速な心身の老け込みを目の当たりにして現状を維持することばかりに執着し、積極的に新しいことに取り組もうとする意欲を失ってしまっていたのに気づかされた。そして、体力に左右されない脳トレの大切さを改めて感じさせられた。

歳をとれば寝ている時間がほとんどという毎日になってしまうし、気力も体調も波が出てくるのは当然なのかもしれないけれど、こんなふうにして、老犬がやる気モードになれることを探すのを(そう簡単にはいかないけれど)楽しんでいけるよう、気持ちを新たにしたところだ。起きている時間が短くとも、そのときに「ヒマ」なのはやはりよくない。犬も人もそれぞれに合った「生涯現役」であり続けられる幸せは何ものにも代え難いことなのかもしれない。

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