切手集めと犬の朝ごはん

文と写真と映像:藤田りか子

近所のおじいちゃんが

「切手を集めている人は何もしない人より幸せ」

とよく口癖のように言っていた。切手を集めていれば「切手を探す」という楽しみがある。さて、もし誰かが「これがこの世で発行された全ての切手です!」とトラック一杯に贈り物として運んできてくれたら?まぁ、それはそれでコレクションが増えて楽しいが、探す喜びは失われてしまう。おまけに、もらった瞬間は嬉しいものの、その感動は長く続かない。

そう「探す」という行為は楽しい。人にとっても、そして犬にとってもだ。

犬はオオカミやキツネと同様イヌ科という動物の一員。犬種にかかわらず程度の差はあれ皆一様に猟欲というものを備えている。と考えると、切手をハンティングする人と同様に、何かを探す機会を与えられている犬、というのは何もすることのない犬よりも幸せ、という喩えもできなくもない。

アシカの朝は庭にばらまかれたドッグフードを探すことで始まる。朝飯をフードボールてんこ盛りにして食べる方が犬にとっては幸せではないか、と思われるかもしれない。もしアシカが野犬として生きていれば、それは一つの贅沢として幸せを感じただろう。しかし、彼女は物質的に十分潤った「人の家庭」という世界に生きている。野犬の世界に比べると刺激が少なくちょっと物足りないぐらいだ。

犬の色彩感覚を考えると、芝生の間や茂みに入った茶色のフードを見分けるのは決して易しいことではない。だからこそ一粒一粒を鼻で探し当てる。

「あ、見つけた!ここにも、あ、あそこにも!」

せっせと探しまくる。唾液で口の周りをびしょびしょにさせながら食べる。ラッコも同様だ。普段それほどドライフードに興味がないのだが、草むらにばらまくと途端に食欲が湧くようで、この時ばかりは貪欲に食べる。この遊びはレトリーバーとして活躍するためにもとてもいい練習だ。茂みに落とされた鳥を、嗅覚できめ細やかに探すという技能がこれで磨かれる。

ご飯をてんこ盛りにして与えるのではなく、探しながら食べさせる。環境エンリッチメントとしても、よろしい。皆さんも状況が許すのなら、ぜひお試しあれ!拾い食いをして困るのでは、という声も聞こえそうだ。が、散歩という状況とフードサーチ、彼らは意外にもちゃんと区別している。犬はそれほどバカじゃない。

今日の画像は、アシカの朝飯風景だ。たまたま今回庭にビニールシートが転がっていたので、いつものフードサーチに少しバリエーションを加えてみた。フードをばらまき、その上にビニールシートを覆い被せたのだ。さて、アシカはちゃんと問題解決することができたか?

フードのにおいはするものの、その姿がない!アシカはしばらくシートの上を走りまわった挙句、シートの下にフードがあることに気がついた。これも良い頭の体操!