犬も暇にはうんざり!

文:尾形聡子

[photo by Alan Levine]

犬は昼夜問わずによく寝る動物、そんなイメージを多くの方が抱いているでしょう。それもそのはず、人は24時間、犬は7時間の概日リズムを持っている、つまり、体に備わっている体内時計の進み方が違うため、人が定めた1日という中での時間の流れ方も異なっているからなのです。

人からしてみれば、犬は年がら年中寝ていていいなあ・・・とついつい思ってしまいがちかもしれません。しかし果たして犬は、 “眠いから寝る”という状況のもと、いつも寝ているのでしょうか。

退屈は人の専売特許ではない。多くの動物が感じている現象

人に限らず犬をはじめとした多くの生物が“退屈”を感じています。慢性的に退屈な状況にある動物には、精神的、認知的、行動的な柔軟性に悪影響が及ぼされる場合があることが分かっています。

たとえば、動物園の動物が檻の中をひたすら行ったり来たりする、あるいは犬が退屈しのぎで足の裏をなめ始めたら年がら年中なめるようになったという行動があります。たとえそれが身体に害を及ぼすものであろうとも、刺激を得るためにとってしまう行動なのです。その一方で、退屈という不快感を取り除くために、消極的な手段として“眠る”ことを選ぶ場合もあります。

動物の福祉、環境エンリッチメント、行動学などを専門にする、英国の王立獣医科大学のCharlotte Burn博士が『Animal Behaviour』に発表したレビューでは、これまでに行われた研究結果などを総括し、動物が慢性的に退屈を感じることは人がそれに苦しむのと同じであり、これまで見過ごされてきている重大な動物福祉の問題だと指摘しています。

退屈で寝るしかないから寝ているならば・・・

動物が感じている退屈を測定して数値化するのはいかにも難しそうですが、Burn博士はそれを判定することができるとしています。しかし、それなりの機器や技術がなく数値化できないとしても、動物が退屈しているだろう状態に考えを及ばせることは難しいことではないと思います。

たとえば犬に長時間留守番させる場合、犬が8時間留守番するのは人が1日中家に閉じこもっていることに相当する、と言えます。単純に計算すれば、人の1日は犬にとっては3日に相当するからです。

暇なときほど時計の針の進みが遅く、楽しいときはあっという間・・・それは人も犬も同じことだと思いませんか?とりわけ犬は、人と共に生活できる社会性を発達させてきた認知能力の高い動物です。ろくに散歩に行くこともなく、何かを学ぶことも、どうするか決断することもないような生活が続けば、頻度も低く、限られた種類の刺激にしか触れることができなくなるでしょう。

もちろん、高齢の犬や病気の犬、痛みを抱えた犬などは、健康で若い犬よりも寝る時間は多くなります。それと、退屈で寝ているのとを区別するのは飼い主の方々次第です。愛犬たちは、退屈で寝るしかないから寝ている状況ではないでしょうか?それぞれの犬に見合った生活の質を向上させていくためにも、退屈というストレスを解消し、いい刺激が受けられるよう環境エンリッチメントを整えていくことが、犬とともに充実した日々を送るうえでとても重要なポイントのひとつとなる、そう思っています。

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