文:尾形聡子
[photo by Zach Dischner]
真夏ももうすぐそこまでやってきています。今年の夏は猛暑との予報で、いったいどんな暑さが続くのかと思うとうんざりしてしまうものですよね。夏といえばまずは熱中症対策。すでに熱中症の症状で動物病院にやってきている犬をちらほら見かけてきましたが、この夏はコロナ予防のマスクのために、人においても熱中症はますます注意が必要とされています。
暑い夏に気をつけるべきことは、熱中症のほかにもいくつかあります。たとえば気温が高ければ細菌の繁殖スピードも早まり、あっという間にウォーターボウルに入った水の質は悪化していきます。涼を求めて水遊びをする機会も増えるものですが、それに伴い事故も増えてしまいます。「水中毒」や「アオコの危険性」などについては飼い主として知っておくべきことでしょう。さらには、植木の水まきに使うホースにも危険があること、みなさんはご存知でしょうか?
5月から8月の期間、日中の最高気温が32度を超えるようなアメリカの南部と西部の暑い地域において庭用ホースの水を浴びてやけどを負った犬の10症例が、獣医学誌『Veterinary Dermatology』に報告されました。
すべてのケースにおいて犬は背中に沿ってやけどしており、いずれもやけどの深さがⅡ度からⅢ度の症状が見られたそうです。Ⅱ度は表皮から真皮にかけてやけどをしている状態、Ⅲ度は表皮から皮下組織にわたってやけどを負っている状態です。Ⅲ度になると神経も焼けてしまうために痛みを感じることがありません。そのため症例の中には、犬がやけどを負っていることに数日間気づかなかった場合もあったようです。やけどの深さについでの説明は以下のサイトをご覧ください。
実際に、どのくらいの温度のお湯に、どのくらいの時間さらされるとⅢ度のやけどを負ってしまうのでしょうか。
人の場合になりますが、The Burn Foundation の報告によりますと、約69℃のお湯に1秒、65℃で2秒、60℃で5秒、56℃で15秒だということです。こちらの記事にも、深いやけどになるのは80℃のお湯だと1~2秒、60℃では10秒と書かれており、いずれにしても、温度が高ければ数秒でひどいやけどを負うことになります。人の皮膚と犬のそれとは異なるとしても、人も犬も一瞬にしてやけどを負う危険性があることにはかわりありません。
ところでホースの中の水は、どのくらいまで上昇するものなのでしょう。
気温が約28~34℃のときに庭用ホースを芝の上で2時間炎天下にさらすと、ホースにたまった水は約49℃になっていたそうです。たった2時間でこれだけ熱くなるのですから、一日中陽のあたるような場所にホースを置いていたら、ホース中の水温はさらに高くなるかもしれません。
このようにしてホースから出てくる水にじゃれつきながら飲むのが好きな犬もいるはず。体だけでなく、口の中のやけどにも注意! [photo by Shayan Sanyal]
夏場には、庭用ホースに残っている水がやけどの惨事を招いてしまいかねません。ホースの保管場所をなるべく陽の当らないところにするようにしたり、ある程度冷たい水が出てくるまでは放水をして、水遊びが好きな愛犬や散歩で通りがかった犬や飼い主、通行人にかからないようにするなど、充分に注意するようにしましょう。
ホースの水だけでなく、車中への置き去りや日陰のない場所への係留などもしないようにして、厳しい夏を愛犬と一緒に楽しく元気に乗り切りたいですね。
(本記事はdog actuallyにて2012年8月22日に初出したものを修正して公開しています)
【参考文献】
【参考サイト】
・pawnation
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