今年の干支、兎にちなんだ犬種たち

文と写真:藤田りか子


Image collage by Rikako Fujita with AdobeStock

あけましておめでとうございます!今年も犬曰くをどうぞよろしくお願いします。そして2023年は犬曰くアカデミー開校の年となります。

まずはお正月恒例の干支にちなんだ動物とそれに関わる犬について、を初記事としてお届けです!

カニンヘン・ダックスフンドの本来の職業は…

今年はウサギ。ウサギと犬の関わりあいとなるとウサギには気の毒であるが、やはり狩るものと狩られるものの関係となってしまう。そしてこの世の犬種には、ウサギ猟のために作られた猟犬種がなんと多いことか!犬種の豊富さは、ウサギのおかげといっても過言ではない。

まずは身近なところでカニンヘン・ダックスフンドから。3サイズ存在するダックスの中で、最小のタイプ。カニンというのはウサギのこと。この長たらしい犬種名を邦訳すると「ウサギのアナグマ犬」というややこしい名となる。カニンヘン・ダックスフンドのサイズでは、荒々しいアナグマを相手にするには小さすぎる。しかしウサギ狩りにはもってこい。よく利く鼻でウサギの潜む穴や茂みをつきとめ、体型の細長さとコンパクトさを活かして、草むらに入って追い立てる。茂みから出てきたところを、猟師が撃つ。あるいは銃の代わりに鷹を放してウサギを狩ることもある。

以下のYoutube動画は、アメリカのとっても「オタク」なカニンヘン・ダックスフンドの愛好家が自分でブリーディングした犬と鷹をつかって狩猟をしているもの。ウサギが隠れているような薮や隙間にダックスフンドが入り追い立て、ウサギが出てきたところで鷹が上から急襲をかけて捕まえる。すばらしきチームプレイ。鷹狩りはアジアを起源としており、日本でも行われている非常に古い狩猟形態だ。

カニンヘン・ダックスフンドと鷹を使ってのチームプレーでウサギを狩るシーン。アメリカから。

地中海の島国、マルタのウサギ猟犬

犬種としてはあまり身近ではないが、ファラオハウンドもウサギ犬である。前述のダックスと同様に、その名前にはちゃんと「ウサギ」という単語も添えられている。原産国である地中海に浮かぶ島、マルタでは、誰もこの犬をファラオハウンドとは呼ばない。正式名称「ケルブ・タル・フェネック」。アラブ語であり、訳すとまさに「ウサギ犬」。その体型から察せられるがごとく、ガゼルのような速やかさと軽やかさでもって、マルタの岩ごつごつの崖ぶちをウサギのにおいを求めてぴょんぴょん跳ね走り回る。


ファラオハウンド。原産国ではKelb tal-Fenekと呼ばれており、訳すると「ウサギ猟犬」となる。

ウサギのにおいを感じると、とたんに突拍子もないほえ声を発する。そしていよいよウサギの潜む穴を突き止めると、さらに声のトーンを変えてそこに居すわりほえ続ける。ハンターはたいてい闇の中で猟をするのだが、その声をたよりに、犬の居場所にやってくる。犬が吠えて示している穴を見つけると、ソーセージのようなひょろ長い動物、フェレットを放し、ウサギを穴から追い立てるのだ。追い詰められ、別の穴から逃げ出したウサギを待ってましたと、今度は待ち構えていた犬が捕まえる。フェレットとファラオハウンドの連携プレイ。マルタのファラオハウンドの話は「マルタの旅 (1) – 姿なきファラオハウンド」でも記しているので、合わせて読まれたい。

以下の動画はフェレットと犬(ラーチャー)をつかってのイギリスでのウサギ狩。

イギリスのヨークシャー・デールズ。フェレットとラーチャーを使ってのウサギ狩。ラーチャーとは狩猟犬として使われるサイトハウンドのミックスの総称。おそらくこの動画の犬たちはサイトハウンドと牧羊犬のミックスだろう。

サイトハウンドもウサギ犬!

ああ、そしてウサギといえば、コーシングなる犬を使う狩猟形態を忘れてはならぬ。サルーキ、アフガンハウンド、ボルゾイにウィペットら、これら脚長のサイトハウンド抜きには語れない。その俊足で逃げるウサギに追いつき、捕まえる方法を指す(ガゼルという場合もある)。動物倫理に基づくと残酷ということで、現在イギリスでは禁止となった猟法であるが、今をもって、アラブ諸国、アイルランド、ロシアでは合法的に行われている。コーシングの醍醐味は、ウサギがターンを切るときであろう。追いつかれそうになると、今まで走っていたコースを急転換。うっかり犬はそのまままっすぐ走っていきそうになるが、そこは、どれだけ犬がウサギにしっかり目をそえて追っていたか、による。犬が同時にターンを切って、その長い尾を舵にしてバランスを取る姿は、サイトハウンド・ファンにとっては、目がハートになる凛々しい瞬間。


ルアーコーシングを楽しむボルゾイ。ウサギに見立てたルアー(手前のビニール袋)を追いかけさせて、その狩猟テクニックを競うドッグスポーツ。 [Photo by Kristianstads kommun]

中央ヨーロッパから北欧には、サイトハウンドではなく、ウサギ狩用のセントハウンドも存在する。こちらは嗅覚を頼りにウサギを突き止める犬たちであるが、やはり中々の脚長の連中である。彼らも、長い脚を利用して、俊足とまではいかないが、けっこうなテンポにてウサギを探し、そして追う。ウサギは自分のテリトリー内をグルグルまわるので、ハンターはウサギがやってきそうなところを予想してそこに待機して撃つ瞬間を待つ。この際も、犬が脚長であることは、ウサギ狩りの猟犬として大事な条件だ。ゆっくり走っている犬に追われると、賢いものでウサギは余裕を得たと、自分の足跡を数メートル逆戻りする。そしてピョ~ンと方向転換をして、追う相手の目をくらます。


北欧原産のウサギ猟のハウンドたち。左からシッレル・ステーバレー、ゴットランド・ステーバレー、ハミルトン・ステーバレー。

ビーグリング

しかし短足でウサギを追うセントハウンドもいる。そして彼らこそうさぎのトリックに引っかからないよう、においを丹念に追う犬だ。みなさんにもとても馴染みのある犬種。そう、ビーグル。こちらはイギリスの貴族によって「開発」を受けたウサギ猟犬。馬に騎乗せずとも、歩いて狩猟できるよう短足のハウンドをつくった。

パック(集団)で狩猟を行い、一頭がにおいを見失ったら別の犬がすかさずバックアップ。地面にぴったりと鼻をつけて、うさぎが走ったあとを確実に辿っていく。鼻が地面に吸い付く様子は、まるで掃除機。その様子をこちらの動画からご覧あれ。ときどきハイピッチで狂ったように鳴くときがある。これは獲物のにおいをとった瞬間。ビーグルの独特のこの歌声を聴きたくてビーグルで狩猟をしたいというファンも欧米には少なくない。ビーグルで狩猟をすることを「ビーグリング」と呼ぶ。

そして最後にうちのラブラドール・レトリーバーアシカが初めてウサギ猟の際に回収をしたときの写真をシェアしたい。レトリーバーはウサギ猟専門の犬ではないが、回収する獲物にウサギはつきもの。写真のウサギは英語ではヘアと呼ばれる大きなヨーロッパノウサギ。体重は5kgほどある。


アシカが9ヶ月齢の頃。初めてノウサギを回収したときの写真。5kgぐらいあるので決して運ぶのは楽ではないが、それよりも回収をしたい!という気持ちの方が勝つ。

ウサギが大好きなみなさん、新年早々すみません。そして犬種をこれだけ豊かにしてくれた世界のウサギ猟の文化に感謝したい。

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