アメリカ大学生の恋愛事情〜同棲は犬と一緒がいい?

文:尾形聡子


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犬が好き。

些細とも思えるそんな共通点があることで、人と人は仲良くなったりするものです。犬好きというだけで、世代も性別も関係なく、普段は交わることのないような人々と犬ともだちになるのも珍しくありません。

恋愛関係においてもしかり。藤田りか子さんが「マッチングサイト恋愛最前線!男と女の間の「ペットという潤滑油」」の中で書かれていたように、特に女性は犬好きな人に好意を寄せる傾向がありそうです。しかも、自分のペットに相手がどう接したかを見て性格を判断すると答えた人は、女性で75%ほど、男性も60%という結果が出ています。犬の存在というものは、犬好きの人々にとって相手との関係性を構築する上でもはや軽視してはならない存在と言っても過言ではないでしょう。

ただしそれは、ややもすれば逆効果になることも。犬が第一で相手のことはいつも二の次、寝ても覚めても犬のことばかり、というような状況が続けば、ついに相手の堪忍袋の緒も切れてしまうかもしれません。相手が自分と同じだけの熱量を持って犬と接したいと思っているかどうか、そこを見極めるのがポイントになりそうです。

あれ、私、大丈夫かな…と多少不安に思う方。どんなことに気をつけたらいいのか、我が身を振り返ってみるためにも藤田さんのこちらの記事をぜひご覧いただければと思います。

パートナー泣かせの「あなたと愛犬」
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このように、犬好きの人にとって日常生活における犬の存在は大きく、そうであるが故に犬と共に暮らす場合、そこに関わる人々の関係性に犬が影響を及ぼすようになっています。犬と人の絆についての研究は数多くされているものの、意外と行われていないのが恋愛関係に与える犬の影響についてです。

そこで、今回はアメリカのモアヘッド州立大学を中心とした研究グループが、大学生の同棲カップルを対象として、犬も一緒に暮らすことがどのような影響を及ぼしているかを調査した研究を紹介したいと思います。研究者らは、大学生で同棲しているカップルで1頭以上の犬を飼っている人を研究対象としました。彼らは犬と共に暮らすことでどんなメリットあるいはデメリットを感じているのでしょうか。


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同棲生活への犬の影響は?

研究者らはアメリカのモアヘッド大学、イーストカロライナ大学、セントラルミズーリ大学の3大学から参加者を募集したところ、同棲カップル(異性愛者に限らず)のうちどちらか一方または両方が犬を飼っているという18名がオンラインアンケートに参加しました。参加者は、年齢や性別など人口統計学上の質問、同棲関係において犬との暮らしはどのような影響があるかについての41項目の質問に回答しました。そこにはポジティブな質問(犬は人間関係にプラスの影響を与える、犬はパートナーを理解するのに役立つなど)とネガティブな質問(犬との暮らしにストレスを感じる、パートナーが犬に嫉妬するなど)があり、それぞれ5段階評価するようになっていました。また、41のうち3項目については自由記載のある質問でした。

アンケートの結果、犬が恋愛関係にどのような影響を与えているかについて、参加者の77%が犬を飼うことは関係性にプラスの影響があるとし、17%は影響なし、マイナスの影響があると回答したのはわずか6%だけでした。

肯定的な影響として、参加者のほぼ全員である97%が飼っている犬が親交をよりもたらしてくると回答、88%が恋愛関係を強めてくれていると回答していました。精神的なサポートに関しては、70%が自分の問題について犬に話をしたことがあり、74%が犬がパートナーの理解を深めるのに役立ったと回答しました。ある女性参加者は次のように自由回答をしていました。

「一緒に愛犬の世話をすることで、パートナーが別の誰かにどう世話をしているのかがなんとなくわかり、彼が私の面倒を見るときのモチベーションを理解するのに役立ち、さらに彼が将来私たちの子どもをどのように世話するかを垣間見ることができる」

また、57%の人がすべてのカップルは犬を飼うべきだ、59%が犬好き同士でなければ結婚できないと回答していました。犬との関係をより良いものにするために、ほとんどの人(88%)が愛犬への愛情を分かち合っていると答え、76%が1匹以上の犬を飼うことは “一緒に子どもを持つようなもの “だと答えていました。ある女性参加答者はこんな回答もしていました。

「私たちの関係に犬がいることで、より良いものになりました。たとえ私とパートナーが言い争ったとしても、犬が必要とするものを与えるために私たちはふたたび手を取り合えるのです」

このようなポジティブな影響が報告されたものの、割合は少ないながら、否定的な影響もありました。もっとも多かったのは、45%の人が犬の飼育は時間とお金がかかるので大変だと回答していたことです。14%の人が犬との暮らしでストレスが増えると回答していて、ストレスの原因として費用、嫉妬、犬の世話における意見の相違、犬をどこで寝かせるか(ベッドかソファか)などが挙げられていました。さらに12%の人が、犬のせいで口論になり、お互いが一緒に過ごす時間が減ったと回答していました。そもそも、26%の人が、誰が犬の世話をするかで意見の相違があったと答え、そのうちの32%が犬のしつけの問題で意見の相違があったと答えています。ある男性参加者は次のように回答していました。

「私の女性パートナーは、私の犬に対する躾の仕方が厳しすぎると言っている」

犬に対する愛情や嫉妬の感情については、17%の人がパートナーより自分の犬を愛していると答え、10%の人がパートナーは自分よりも犬を愛していると思うと回答していました。そして15%の人がパートナーが自分と犬との関係に嫉妬していると答えたものの、パートナーと犬との関係に嫉妬したことがあると答えた人はその約半分の8%だけでした。

男女それぞれの傾向としては、男性はパートナーが犬に嫉妬している、パートナーと一緒に過ごす時間が減ると答える割合が有意に高く、総じて犬がいるせいで同棲生活のストレスが高まったと答える傾向が高いことがわかりました。一方で、女性は犬は素晴らしい仲間であると考え、自分の問題を相談する割合が有意に高く、犬のおかげでパートナーへの理解が深まったと報告する傾向が高いことがわかりました。

簡単にまとめれば、全体としては同棲生活を犬と共にすることでポジティブな影響を感じているものの、男性の方が女性よりも犬を飼うことに伴う不利益を感じやすい傾向にあったことが示されたと言えるでしょう。


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Love me, love my dog

日本では、あれやこれやと忙しい大学生が犬と一緒に同棲生活をしたい、と考える人はかなり限られていると思われます(そもそも、犬を飼育できる賃貸物件が少ない)。しかし、大学を卒業して社会人になり、パートナーを得て、晴れて犬と一緒に暮そうとするときに、アメリカの大学生のように「学生時代の同棲生活で犬と暮らす」という経験をしておくことそのものに、メリットがあるように感じます。たいていの人は実家暮らしのときに犬を飼っていたという経験はありますが、そのときの責任はあくまでも親にあるからです。

このような経験が学生時代からできることも、海外での犬の世帯飼育率が高く、一方、日本では毎年減少していっている原因のひとつにもなっているかもしれないとも。乱暴な言い方をすれば、犬との暮らしに(デメリットはあっても)メリットを感じることのないままに生きてきた人が増えているためかもしれない、そんなふうにも考えられると思ったからです。

ちなみに今回紹介した研究論文のタイトルには「Love me, love my dog」ということわざが使われていました。これは、日本のことわざ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と反対の意味を持ちますが、いずれも同じ感情的な発想から生まれているものです。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」は、相手を憎むとそれに関連するあらゆるものが憎くなるということを意味しています。「Love me, love my dog」はそれとは逆のアプローチで、直訳するならば私を愛するなら私の犬も愛して、ということですが、これは、私を愛するのであれば、私の家族や友人も含めて私のすべてを慕うことが愛情、というような意味合いを持ちます(半ば脅迫的なのでしょうか?そのあたりのニュアンスがわからずすみません)。

対象となる相手だけでなく、その相手を取り巻く関係すべてを「憎む」か「愛する」かの違いということになりますが、このあたり、日本文化とアメリカ文化における社会的な違いを象徴しているなあとも感じたりするものです。

【参考文献】

Love me, love my dog: Cohabitation, dogs and romantic relationships among college students. Human-Animal Interactions. 2023

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