文:藤田りか子
前回は、欧米で発達してきたブリード・レスキューという仕組みと、その役割について紹介した。一般のシェルターとは異なる運営方法や、犬種に特化しているからこその利点がある。今回は、犬種を熟知した人たちだからこそ可能になるレスキューのあり方を、具体的な例とともに見ていきたい。
一般のシェルター vs ブリード・レスキューグループ
その1の記事での例のように、一般のシェルターではなく、ブリードクラブがやっていたら…というような問題は、アメリカやイギリスを中心に討議されていることである。イギリスのケネルクラブで約20年間事務局長を務め、犬の福祉やブリーディングの分野で長年活躍してきたたキャロリン・キスコさんは語る。
「あるシェルターにハスキーがやってきたという知らせを聞きつけて、すぐにそのシェルターへ連絡しました。イギリスには『ハスキーの幸せを考える会』というレスキューグループがありますから、シェルターがそうした団体に連絡を取っているかどうかを確認したかったのです」
キャロリンさんはシベリアン・ハスキーに関する著書もあるほど、長年この犬種に携わってきた専門家でもある。結果は、シェルター側のスタッフ曰く
「うちのシェルターに他のレスキューグループを巻き込む必要なんてないんですよ。だってハスキーなら簡単に里親を見つけることができますからね。入所と同時に、もう次の日にはケージから出て新しいオーナーの元にいるという感じですよ」
これに対してキャロリンさんは危惧の念を隠せなかった。
「私が言いたいのは、一般のシェルターがもう少しブリード・レスキュー団体と協力体制をとったら、ということなんですね」
ハスキーがどんなに群れ生活を欲する犬か、それが一匹で飼われたらどんな問題行動を起こすか、ある環境にたいしてハスキーならどういう風に反応してしまうのか、ハスキーとの長いつきあいの歴史を持つ彼女なら、ハスキーの一挙一動を全て予想することもできる。だからこそ、自分だけの知識に頼らずに、一般シェルターはもっとブリードレスキューの意見を聞いてから、一緒に協力して、里親探しをすべき、それがキャロリンさんの意見だ。
「一般シェルターの間では、どれだけ里親探しに成功したか、というシェルター同士でのやや競争じみた気風もありましてね。とにかくできるだけ多くの犬を新しい家に送ればいい、それではい、終わり、と。それで余計にブリードクラブなんかに関わってもらいたくない、という態度になりがちです」
もちろん全てのシェルターがそうとは限らないが、と彼女は付け加えている。
「みんな、犬を助けたい、という善意な気持ちではいっしょなんですけれど、どうしても団体同士でいがみ合ってしまうものです」

