ミックス犬にもお国柄…?


グルジア共和国の山岳の村で見かけた「血統証」のない若犬。純血種でもないのに、ロシアの牧畜番犬であるオフチャーカのルックス。大きなスカル(頭蓋骨)、やや短めなマズル。マスティフタイプの犬だとすぐに認識できる。

ミックス犬に特徴がないといったのは一体誰?

とんでもな〜い!国別にみてみると、これがけっこうミックス犬でも特徴がそれぞれに存在する。たとえば、日本だったら柴犬もどきのミックスが断然多い。必ずしも血統書付きの日本犬のような巻き尾や差し尾とは限らない。でも立ち耳でスピッツ系のキツネ顔をしているのだ。いわゆるどこにでもいる「ポチ」のルックス。けれどこんなキツネ顔犬、欧米の街角でみることってあまりない。なにしろたいてい垂れ耳。

そう、ミックスにもそれなりのタイプがある。ややもすれば犬種的味わいのある犬もいる。さらに話を飛躍させれば、それぞれの国のミックス犬が持つ特徴こそ、そこの国の原産犬種の特徴を示しているともいえよう。

そんな理由で私にとっては、外国で野犬を見るのは、楽しみの一つ。例えば、ポルトガルの農村地帯に訪れたときは、立ち耳で、尾は長く、脚はすらりとしたクリームから赤いワイヤーコートの野犬をたくさん見かけた。ちょうど、それはポルトガルの国犬、ポデンゴを思い出させ、一頭連れて帰りたい程だった。


飼い犬ではあるが、ポルトガルの街角で見た「ミックス犬」。耳が大きく、ポデンゴ系の犬だとはっきりわかる。

旧ソ連のグルジアのコーカサス山脈地方を訪れた時も同じだ。そこはコーカサス・オフちゃーカという牧畜番犬種の出身地であるが、村にはオフチャーカ風の頭部のしっかりとしたマスティフ系の「野良犬」がうろうろしていた。

「お~、あっちにもこっちにもオフチャーカがいるぞ!」

とついカメラをパチパチとやってしまった(トップの写真を参照に)。野犬の中でこれだけマスティフ風の犬が見れるなんて、マスティフファンの私にとってまるで天国。が、地元の人は、こんな雑種犬たちのどこがそんなに珍しいのかとたいていあきれ顔で見ていた。一方で彼らは、「これはアメリカからやってきた血統付きのシュナウザーなんだ」、と自慢気に見せてくれた。こちらにしたら地元の野犬の方がよっぽど特徴があって面白い。


こちらは純血種のコーカシアン・シェパード(コーカシアン・オフチャーカ)。グルジアのホテルの従業員が飼っていた。

中央から北ヨーロッパだと野犬管理が進みすぎているので、その国ならではの雑種というのはあまりいない。それもちょっとつまらない。雑種に特徴があって面白いのは南欧、東欧、そしていわゆる先進国ではない国々である。管理されていないからこそ、地元ならではの味わいがある犬がでてくるのだ。

と考えると、雑種と純血種の差なんて意外と紙一重のもの。よい例が沖縄の南大東島に”生息する” 短足の地犬、大東犬だ。沖縄県の島の自然を紹介するサイトには「(大東犬は)この大東島だけという限られた場所で、血縁交配を繰り返したために、特殊な体つきになった」、そして「雑種である」との記載がある。え、本当に雑種?

大東犬は地理的隔離(島だから)されているために、犬の交配は狭い遺伝子プール内で行われてきたはずである。だからこそ、まさに純血種のごとく血縁交配もさかんに行われ、見かけがたがいに似てくるのである。国犬種ができあがるのも、実は人工的に作られた血統種と似たようなプロセスをたどる。そして、このような地犬は、DNAを解析すると、犬種と呼ぶに値する一定の遺伝子構造を持っていることがわかっている。

島という地理的に隔離された環境で、DNAの面から犬種として認められる例としては、イタリア・サルデーニャ島のフォニス・ドッグがいる。尾形聡子さんの記事「サルデーニャ島に移り住んだ人々と歴史を共にしてきた犬、Fonni’s Dog」を読んでみると、そのあたりがよくわかるはず!