文と写真:アルシャー京子
犬の食餌のことを私は「いぬめし」と呼んでいる。
「いぬごはん」じゃ擬人化し過ぎだし、「いぬのえさ」と言ってしまうと何だか寂しい、かといって「いぬまんま」じゃ味噌汁ぶっ掛けご飯の「ねこまんま」のようで栄養が偏ってそうな気がする。
そこで、手作り食を通して犬の体に力が出るよう「いぬめし」と勝手に命名した。出来れば筆で思い切り力強く書いた文字を想像して欲しい。この際だから商標でも取っておきたいくらいだ。
こんな前置きはさておき、今回から「犬に必要なビタミン」をテーマに少しお話しよう。
近代科学の落とし穴とも言える発想「犬に必要なビタミンは一体ナニでどれくらい?」を考える前に、私は「犬がビタミン源として食べてきたものはナニか?」をまず考えたい。
なぜか今の犬の手作り食ブームではヒトの食事同様「ビタミン源=野菜」とハナッカラ叩きこまれているようだが、ちょっと待て。よーくこの部分を考えて欲しい。
犬が野菜を口にしたのはあくまでもヒトの食事の残り物を分けられていた経緯から。しかし野菜よりも犬は果物の方をよっぽど自発的に口にしていたとも言える。
それよりも犬を猟犬として使い、ヒトがウサギや鹿などの獲物の肉を得て、その残りの内容物付き内臓を犬がもらう、これがもっともな成り行きではないかと思うのだ。内臓の内容物とはつまりウサギや鹿が食べたもの、草原に生えている草やタンポポ、ハーブ類を中心に木の芽や根っこなど入り混じったものである。ここから犬は植物由来のビタミンや脂肪酸などを摂っていた。
ヒトの手による作物である野菜も、獲物の消化器官に残っている内容物である植物も、当然ながら季節によって種類は違ってくるうえ、獲物なんて毎日獲れるとも限らず、野菜や植物から摂れるビタミン類なんてのは常に一定ではなかった。
これはまず手作り食派にとってひとつ安心できる要素ではないだろうか?(笑)
さらには昔の穀物といえば現在のような磨きのかかった精白米・精白麦などではなく、やはり玄米・全粒麦であった。全粒穀物中の表皮や胚芽には多くのビタミン・ミネラル類が含まれていて、犬もヒトもそれを日常的に食べていたのだ。
毎日の食餌で必ずすべてのビタミンをバランスよく摂る必要なんてない。もっと付け加えるならばお腹の腸内細菌が元気であれば、彼らだってたくさんのビタミン類を作り出してくれるのだから。
近代社会になるにつれ、技術は進化し食卓は一見豊かになったようだけれど、通年出回る季節感のない野菜とただのでん粉の塊のような穀物により、私たちの体はどこか怠けてしまった気がする。これは年中同じ成分内容のドッグフードの食餌にも言えることかもしれないと私は思う。
次回は天然ビタミンの宝庫「レバー」について。
(本記事はdog actuallyにて2009年2月17日に初出したものをそのまま公開しています)
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