ビタミンと犬 (2)

文と写真:アルシャー京子

犬はみんな大好き、レバー。いくら好きだといっても食べすぎには注意?それとも?

レバーの話

野菜なんかよりもなによりレバーこそ犬にとって自然なビタミン源と私は言い切りたい。手っ取り早くて効率のよいビタミンといえばレバー、獲った獲物に必ず一個付いているレバー。

レバーにはビタミンAをはじめ、B群葉酸パントテン酸ビオチンのほか、亜鉛などの微量元素も豊富に含まれ、まさにこれなくしては犬の食餌は語れないほど。ドライフードのパッケージを見るとこれら一つ一つのビタミン要素をわざわざ添加物(天然・合成に限らず)でバランスをとっていたり、あるいは手作り食の場合サプリメントなんかで補充していたりするけれど、そんな手間をかける必要はない。レバーを食べればいいのだ。

「だって、レバーを与えすぎるとビタミンAの過剰症が心配で...」と世間ではよく言うが、これを耳にしている飼い主のどれだけが「じゃあ、どのくらいの量を食べたらビタミンA過剰症になるか」を把握していない。これもまた塩分の話と似たところがある。

ビタミンAは目のためだけでなく、上皮細胞(皮膚や粘膜)を保護するので感染症から体を守るのに大事なビタミン。ビタミンAが欠乏すると皮膚や粘膜は乾燥し、硬く角質化する。またたんぱく質の合成や骨の成長に大きく関与するので成長期の仔犬にとってはますます欠かせないビタミンである。

体に入ってきたビタミンAは肝臓に蓄積され、体の必要に応じて使われてゆくから、愛犬の肝臓にある程度のビタミンAがリザーブされているならば、少々の期間ビタミンAなしの食餌が続いても障害は出ない。

摂りすぎたビタミンAは肝臓が満タンになるまで貯め続けられ、そしてさらに過剰な分は別の形に代謝されてからおしっこに排出される。

さて、気になるところの毎日摂りたい理想的なビタミンA量は犬の体重1kgあたり75-100IU(国際単位)、体重10kgの犬で750-1000IU、これを食材のレバーに置き換えると(動物種により若干差はあるが)たった2-3gぽっち。成長期の仔犬や高齢の犬、妊娠・授乳中の母犬ではもちろん需要が高くなり、体重1kgあたり250IU(体重10kgの犬で2500IU、健康な成犬の約2.5-3倍)となる。

レバー3gってほんのこれっぽっち...

ちなみに同じ量のビタミンAを野菜から摂ろうと思うとまず食材が限られる。現実的なところで選ぶとすると「ニンジン」と誰もが答えるだろう。ニンジンから上記のビタミンA量を摂ろうと思うと体重10kgの犬は20gのニンジンを毎日食べなくてはならない。そしてなにより、ニンジンはβ-カロチンには富んでいるがその他のビタミンはレバーに比べるとまるで空っぽなのである。ビタミンAだけでなくその他のビタミン類の供給をもひっくるめレバーはダントツに素晴らしい食材なのだ。犬の鼻はその事を良く知っている。

さて、話を少し戻してビタミンAの過剰症についてここで話そう。

ビタミンAの過剰症として犬の体に現れる変化は、仔犬では成長停滞、過剰な興奮状態、低カリウム血症、骨密度減少による度重なる骨折など。

これらの過剰症が心配されるビタミンA過剰摂取だが、実のところ犬という生き物はヒトなどの他の動物に比べビタミンA過剰に対する寛容性が非常に高い。例えて言うならば体重10kgの犬に毎日200倍量(570gものレバーに相当)を3ヶ月食べさせ続けた場合にもなんら症状は見られず、3000倍量でようやく過剰症がみられたというもの。いくらなんでもこれは非現実的すぎる量である。通常のいぬめしのレバーの量ではヒトで言うビタミンA過剰症を気にするに至らないことが分かると思う。

ちなみにヒトでは一日の所要量の2.5倍程度ですでに過剰症が心配されるため、直接過剰にならないβーカロチンを含む野菜類からの摂取が奨められている。これを世間は犬にも当てはめていたというわけだ。しかし、犬とヒトとは体の作りが異なる。

それよりも赤肉中心の食餌によりビタミンA不足の犬の方が多いのではないかと私は懸念する。愛犬のお腹が弱いとか、今ひとつ元気が足りないといった場合には滋養強壮のためにもレバーをおすすめしたい。

レバーの話が出るたび言うことだが、レバーは解毒器官でもあるので食材として選ぶ場合は出来るだけ自然飼育など質の良い物を選んで欲しいほか、レバーは酵素を含む内臓なので鮮度も気にかけよう。

「毎日与えるのは保存が大変」という場合には、レバーを一回分の大きさに切って冷凍保存し毎日一個づつ解凍して与えたり、あるいは週に2回レバーメニューの日を決めてまとめて与えてもいい。

さらにはクッキーなどに加工して与える事だってできる。レバークッキーの作り方は「犬クッキーの達人になる」の「お大事にねクッキー」を参考されたし。クッキーに使用したレバーの量を出来上がったクッキーの数で割ると一個当たりに含まれるレバーの量がだいたい分かるから、愛犬の体重に見合ったレバーの量と比較しつつ与えることが出来る。

ともあれ、与える量はあまり神経質にならなくても良いけれど絶対に与えたい食材というのがレバー。これが今日のポイント。

次回はビタミンB群についてのお話を。

(本記事はdog actuallyにて2009年2月20日に初出したものをそのまま公開しています)

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