文:尾形聡子
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犬の毛色はその個体における大きな特徴であり、また、犬の毛色に対する人の好みは犬種と同様に時代や流行に左右されます。犬種スタンダードにはその犬種が持つべき毛色についての記載がありますが(何色でもOKならばその旨が記載されています。たとえばアフガン・ハウンドなど)、犬種スタンダードに記載されていないような珍しい毛色を持つ犬を欲しがる人がいるのが世の常で、それを見越して珍しい毛色だからとむしろ高値で売られることもあります。
犬種にかかわらず雑種においても、特定の毛色は特定の遺伝病と密接な関係にあることがわかっています。たとえば牧羊犬によく見られるマール、グレート・デーン特有のハルクイン、ダルメシアンのスポットなどが挙げられます。毛色産生に関わる遺伝子に変異が起きると、その遺伝子が別の場所で別の働きを持っている場合には、それに伴い思わぬところで病気が発症することがあるのです(遺伝子の多面的作用)。「遺伝子変異が引き起こす犬の皮膚病について」の記事から、被毛と病気との関係について述べた部分を以下に引用します。
被毛に関係するマール遺伝子、ヘアレスドッグに見られる外胚葉異形成、ホワイト・ドーベルマンの眼皮膚白皮症(OCA)、なども多因子疾患ではなく、単一遺伝子によって表現型に影響を及ぼすものとして知られています。マール遺伝子はダブルマールとなれば被毛の色が薄くなるだけでなく、目や耳、内臓などにまで影響がでてきます。また、ヘアレスドッグは被毛がまったく生えない、またはごく一部に生えますが、もれなく歯の発生にも異常があることもわかっています。そしてホワイト・ドーベルマンは、いわゆるアルビノ個体になりますので、明るさに対して敏感で皮膚腫瘍を発生しやすいといわれています。
これ以外にも毛色あるいは被毛の状態と病気との関係がわかっているものもありますが、それについてはまた別の機会にお話しさせていただくとして、今回は、アルビノと呼ばれる「眼皮膚白皮症」の症状を主症状のひとつとする病気「ヘルマンスキー・パドラック症候群」について、ココアカラーのフレンチ・ブルドッグへの影響