犬は本当に嫉妬する?

文:尾形聡子


[photo by smerikal] これは嫉妬?間違いやすいのが羨望。

犬は嫉妬するのか否か?と聞かれたら、皆さんどのように返事をしますか?

きっと多くの方が「うちの犬は嫉妬したことがある」「犬も人みたいに嫉妬するよ」と答えるのではないかと思います。飼い主からのこのような回答は巷に溢れているものの、犬の行動を擬人化しがちな飼い主によるバイアスの存在が考えられるため、残念ながら科学的なエビデンスとして使用できるとは限りません。はたして本当に犬には嫉妬心があるのかどうか?について調べる数々の研究が行われてきていますが、嫉妬のような行動を取るという多くの報告がある一方で、その逆を示す結果もあり、依然として犬に嫉妬する気持ちがあるのかどうかは研究界において定かではありません。

そもそも「嫉妬jealousy」とは、自分に愛情を向けてくれる人を所有し続けようとするときに起きる「誰かに奪われ失うかもしれない」という恐れを含んだ気持ちで、そこには、嫉妬をする当人、自分に愛情を向けてくれる人、その人を奪おうとする人の三者関係によって成り立つものです(「犬の競技会をめぐる嫉妬と羨望(1) 悪性の羨望にはご注意を!」より)。

これまでの研究から、犬は飼い主と絆を結び愛着関係を築くことができると言われています。人の養育者と子どもの関係と同様の関係性を飼い主と持てる犬にとって、自分に愛情を向けてくれる飼い主を奪おうとする第三者(別の犬または別の人)の存在は脅威になりかねず、人の子どもと同じように嫉妬の気持ちを抱いて行動することがある、そのように仮説を立てるのは自然な流れでもあります。なぜなら犬は人と社会的なコミュニケーションをとる能力を持ち、その文脈のなかで柔軟かつ多様な相互作用をはかれるとも考えられているからです。

犬の嫉妬行動としては、

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