デザイナードッグは純血種よりも健康?プードルハイブリッド犬に雑種強勢は認められるか

文:尾形聡子


[photo by Yuval Helfman] デザイナードッグ流行のきっかけとなった、ラブラドゥードル。

この200年ほどの間にたくさんの「犬種」が作出され、その弊害として犬種に発症する遺伝病が増加、さらには多くの犬たちの役割(仕事)が変わってきています。たまたま今がそんな時代だからこそ、多種多様のデザイナードッグあるいはハイブリッド犬などと呼ばれるカテゴリーの犬たちが誕生したのでしょうか。過去には純血種か雑種かという区別がされていましたが、これからは、純血種か雑種か、あるいはデザイナードッグあるいはハイブリッド犬(以下、デザイナードッグと記載)の3つに大別されるようになっていくのかもしれません。

あらためて、純血種、雑種、デザイナードッグのちがい

純血種とは各犬種のスタンダードに記載された特定の見た目や気質、特徴を備え、同じ犬種同士、閉じられた遺伝子プールの中で繁殖が行われている犬です。純血種として認められるには犬種としての特性が安定して出てくるようになるまでには何世代にもわたる繁殖が必要です。この数百年のうちに新しく誕生した犬種は基本的に2犬種以上のクロスブリーディングによって目的とする特徴を備えるようにしてつくられてきました。もちろん、そのようなクロスブリーディングに使われる犬種はそれより前から存在していて、現在の犬種に血は流れてはいるものの、すでに絶滅している犬種もいたりと、長い歴史の中で犬はさまざまな姿形、特性を獲得してきました。

そして各地域に古くから存在している土着の犬もいます。犬種というものが出来上がる以前からずっと同じような遺伝子を持った犬がその地域で生き延びてきていて、のちに人々がそのような犬をあらためて「犬種」として保存している、というケースです。かつては人の移動に伴い犬も一緒に移動していたことも多かったため、各地の犬のDNAを研究することがより詳細に人の移動経路を知ることにもつながると考えられています。そのような研究のひとつが「サルデーニャ島に移り住んだ人々と歴史を共にしてきた犬、Fonni’s Dog」で紹介した犬で、まさに、島という閉ざされた環境が作り出した土着の犬種と言えます。その点については、同じく島国である日本の犬のことを考えれば、想像がしやすいでしょう。

ちなみに今や世界中で愛される家庭犬として名高いゴールデン・レトリーバーが犬種として認められたのは100年ほど前のこと。現存する犬種の多くは、目的を持ったクロスブリーディングにより誕生してきたとも言えます。クロスブリーディングは家畜のみならず作物全般において広く行われている品種改良方法で、その品種の形質の向上を目的としています。

さらに現在では、遺伝的多様性を失ってしまった犬種の健康を取り戻すために、クロスブリーディングの試みが行われるようになっています。有名な例としては、尿酸を代謝できなくなってしまった犬種ダルメシアンと、ポインターのクロスブリーディングです(「ダルメシアンに正常な尿酸代謝能力を!」参照)。藤田りか子さんの「クロスブリーディング– 北欧における遺伝的多様性と犬種健全性維持への挑戦」でも現在のクロスブリーディングの現状が紹介されているので、この機会にぜひご一読を。このようなクロスブリーディングは「目的を持って犬の健康を向上するために計画された上で行われている繁殖」だということを頭において、先を読み進めていただければと思います。

では、そもそもクロスブリーディングを経て誕生した純血種は、雑種あるいはデザイナードッグとは一体何が違うのかということになってきます。まずは

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