愛犬の尻尾、たまに振れなくなることはありませんか?

文:尾形聡子

[photo by Eric Sonstroem]

尻尾がだらりと垂れ下がり、痛みがあるため犬が自ら尻尾を思うように動かせなくなってしまう状態になることがあります。通常は2、3日~2週間もすればまた元の通り元気に尻尾を振れるようになるのですが、このことを英語では Limber tail syndrome、または swimmer’s tail、cold water tail などといいます。日本ではコールド・テール(症候群)、スイマーズ・テールなどと呼ばれることが多いようです(以下、コールド・テール症候群といいます)。

コールド・テール症候群は比較的短い期間で自然に治癒するため、動物病院での診療も少なく、科学専門雑誌に最初に発表されたのも1997年と今から20年ほど前のことです。これまでにコールド・テール症候群では筋肉の炎症が見られる報告がされていますが、ハッキリとした原因は示されておらず、ポインターやレトリーバーなどの大型の猟犬種で実際に作業犬として働いている犬によくみられるといわれてきました。

その時には発症率は1%未満であることが示され、自然に回復することからも、コールド・テール症候群はさほど重視されずにいました。しかし、このたび英国エジンバラ大学の研究者らがラブラドール・レトリーバー124頭(症状経験あり38頭、なし86頭)を対象に調査したところ、9.7%の発症率であることが明らかになりました。よってコールド・テール症候群はこれまでに考えられていたよりも一般的にみられる可能性があるとし、結果を『Veterinary Record』に発表しました。

コールド・テール症候群発症のリスク因子としては、作業犬であることのほかに、泳ぐこと(スイマーズ・テールとも呼ばれる所以)や寒い気候も関係しているではないかといわれていました。調査対象頭数を増やしての今回の調査からも、家庭犬として暮らす犬よりも作業犬として働く犬に多く、泳いだ犬のすべてではなかったものの、コールド・テール症候群になった犬のうちの数頭は発症前に泳いでいたことが明らかになりました。そして、より寒い地域(北部)に暮らしていることも発症リスクを高めていたそうです。

さらに今回の研究から、発症と血統の近さとの関連性が見られ、遺伝的な要因も関与していることが考えられると研究者らはいっています。

比較的短い時間で自然治癒できるとはいえ、コールド・テール症候群には痛みが伴います。ですので、リスク要因として挙げられているような運動や水泳、寒い気候といった環境要因も気に留めておく必要がありそうです。遺伝的な要因についてはさらなる研究が待たれるところですが、両親や兄弟姉妹にコールド・テール症候群になりやすい個体がいるような場合も同様に注意をしておいたほうがいいでしょう。

これから暑い季節へと向かいますが、とりわけ水好きのレトリーバーは、泳いだ後に体を冷やさないように気をつけるのも大事かもしれません。これまでに尻尾の調子が悪くなったことのある愛犬には、尻尾を含めて全身の健康状態のチェックを怠らないようにしましょうね。

(本記事はdog actuallyにて2016年8月25日に初出したものを一部修正して公開しています)

【参考サイト】
The University of Edinburgh News