文:尾形聡子
[photo by Tracey O’Dea]
ディンゴは何千年もの間、オオカミと犬(家畜化された犬)の両方から地理的に隔離されたオーストラリア大陸で生き延びてきました。五十嵐廣幸さんの記事「ディンゴというもの、そして日本の野犬の将来」の中に書かれているように、見た目は犬のようであるものの、いわゆる一般の家庭犬とは異なる特徴があります。以下に、記事からいくつかを抜粋してみました。
- 頭の幅が肩幅より広いこと。ディンゴの頭はその体のどの部位よりも大きい。
- ヒゲを使ってハンティングをする。
- 吠えることは稀でありhowling(遠吠え)をする。
- 犬よりも比較的長い犬歯を持っている。
- 穀物は食べず、低脂肪であるウサギなどを好む。1日の摂取量は350g~550g。
このように、ディンゴは体格や習性など犬とは違う特徴を持ちますが、その進化についての議論が続けられています。なぜなら犬の家畜化の過程を知ることは先史時代の人類の移動や文化の発展を知る上でとても重要であり、ディンゴは中でも犬の進化を語る上で非常にユニークな存在でもあるからです。
ディンゴの歴史
ディンゴは5000年〜8500年前にオーストラリアに入ったと考えられています。それまでオーストラリアでオオカミと同じニッチ(生態的地位)を持っていたフクロオオカミ(サイラシン)はディンゴとの生存競争に敗れて絶滅し、その後、ディンゴはオーストラリア大陸の頂点に立つ捕食者となったと言われています。現在は、少なくとも砂漠系と高山系の2つのタイプが存在しています。
ディンゴは自然選択により小さな有袋類や爬虫類などを餌として生き延びられるようになり、子孫を残してきました。しかし、1788年に最初の家庭犬となる犬がオーストラリアに持ち込まれてから、それに続く入植者の増加とともに、ディンゴは家庭犬と交雑してそのDNAがディンゴの遺伝子プールの中に持ち込まれたとされています。
これまでのゲノム研究で、ディンゴは