文:北條美紀
[Photo byJin Kemoole]
私は犬が苦手だった。正確に言えば、犬そのものが苦手なのではなく、犬と関わることが怖かった。完全に自意識過剰なのだが、犬と関わっている私が、周囲からどう見えるかが異常に気になった。そのせいで、目の前の犬のことなどほとんど見えていなかったというのが正直なところである。
「周囲からどう見えるか」なんてことが気になるのは、「周囲は私を見ている」し、「周囲は私をおかしいと思うに違いない」などと勝手に思い込んでいるからだ。この無意識的な思い込みを、心理学の世界では