文:尾形聡子

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若いころには難なくできていたことが、少しずつできなくなっていく。それが老化です。しかし、ライフステージの変化は新年が始まるようにして起こるわけではなく、境界線はあいまいなものです。
いつの間にか歩くスピードがゆっくりになっていたり、寝ている時間が長くなったり。名前を呼んでも反応が遅くなったり。それはある日突然始まるのではなく、小さな変化が積み重なっていき、ある時ふと気づいたりするものです。
そして、そんな変化に気づくたび、飼い主は小さな調整をしながら暮らしていきます。もしかしたら、そんな調整が続いた先にあるものを、介護と呼ぶのかもしれません。もっとも、その最中にいるときには、自分が介護をしているとは思っていないことも少なくないでしょう。
近年、犬の寿命が延びるにつれ、高齢犬に関するさまざまな角度からの研究が増えてきています。今回紹介する二つの研究はそのような研究のひとつですが、認知機能障害を抱える犬の飼い主を対象としたものです。ただし、研究者たちが注目したのは犬の認知機能そのものについてではなく、老いていく犬と共に暮らす飼い主の経験でした。
犬の介護における「介護負担」
高齢犬との暮らしの中で生じるさまざまな変化は、ときに飼い主の生活や心理面に影響を与えます。このような影響は、人の介護分野で用いられてきた「介護負担(Caregiver Burden)」という概念を用いて研究が行われています。
介護負担とは、介護を行う人が経験する感情的、身体的、精神的、社会的、経済的な負担のことです。近年では、この考え方が犬や猫などの伴侶動物の介護にも応用されるようになりました。
犬曰くでは以前、変形性関節症や問題行動を抱える犬の飼い主が抱える負担についても紹介しました。これまでの研究から、変形性関節症のような慢性的な病気を抱える犬の飼い主ではストレスや不安、生活の質の低下がみられることや、治療内容の複雑さ、獣医師との関係性、さらには安楽死についての悩みなどが介護負担と関係することが示されています。
では、高齢犬の中でも認知機能障害(Canine Cognitive Dysfunction:CCD)を抱える犬の飼い主ではどうなのでしょうか。それについては「犬の飼い主が抱える介護負担への理解を」にて、オーストラリアの研究を紹介しましたが、その後も研究は続けられています。2026年、スロベニアのリュブリャナ大学の研究者らは、認知機能障害を抱える犬の飼い主がどのような負担を経験しているのかを調べました。
認知機能障害の犬の飼い主は、何に負担を感じているのか
リュブリャナ大学の研究者らは、健康な高齢犬の飼い主、慢性のがんを抱える犬の飼い主、そして認知機能障害を抱える犬の飼い主を対象として、

