問題行動のある犬の飼い主は何をどう感じてる?

文:尾形聡子


[photo by Henrik Sandklef]

日本やアメリカの犬の8割以上にひとつ以上の問題行動がみられるという報告があったのは去年のこと。程度の差こそあれ、犬の問題行動はとても一般的なものといえるでしょう。ですが、あまりにひどい場合には、飼い主と犬との間の絆の崩壊をもたらすことがあり、そこから飼育放棄や安楽死の選択をする可能性が高まることがわかっています。そのため、問題行動がどのように犬の福祉に影響を及ぼすか、犬の問題行動を発生させないようにしていくにはどのようにしたらいいのか(繁殖や生育環境などを含め)など、犬の福祉を向上していくための研究が数多く行われてきています。

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また、犬や猫などペットとの暮らしが人にもたらすいい影響についての研究は、山のように行われています。心身の健康にいい、社会的生活が活発になる、子どもの情緒教育にいい…など枚挙にいとまがありません。しかしながら、問題行動を持つ犬との暮らしが人にもたらす悪影響に焦点を当てた研究はほとんど行われていません。

たとえば人の場合、精神疾患を持つ子どもの親は、世話の負担増、経済的負担増、不安や悲しみからくる鬱の症状を生じる可能性があることが知られています。そしてそれは家族のシステム全体にも悪影響を及ぼす可能性があることを示唆します。一方、いまや犬は多くの飼い主に家族の一員と見なされているため、深刻な行動の問題のある犬と暮らす飼い主、そしてその家庭においても同様の問題が起きるだろうことが考えられます。犬を大切に想う気持ちと、努力ではどうにもならない現実とのギャップに人知れず悩む飼い主も決して少なくないかもしれません。

問題行動のある犬と暮らす人々は、どのような経験をし、どのように世話をして、どのような気持ちを抱えて関係を保ちながら暮らしているのでしょうか。アメリカの医療ソーシャルワーカーと動物行動学専門の獣医師は新たな学問分野を切り拓こうと、ペットの問題行動が人の生活の質に及ぼす影響に着目して調査研究を行い、結果を

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