リブレラの副作用? うちのシニア犬のケース

文と写真:藤田りか子

今回は「リブレラ」という薬について触れる。ただし、私は獣医師でもなく、この分野の専門家でもない。ここに記すのは、あくまで我が家のシニア犬、ラッコが、どのような経過をたどってきたかという記録であり、私自身の経験に基づく話だ。その点を踏まえたうえで読んでいただければと思う。

今から3年前のこと。スウェーデンの動物病院では「シニアチェック」と呼ばれる定期検診が設けられており、当時10歳だったラッコを連れて受診した。血液検査、尿検査ともに問題はなく、「健康」と太鼓判を押してもらったのだが、その際、獣医師から次のようなアドバイスを受けた。

「少し後ろ脚の動きが硬くなっていますね。歳だから関節炎の可能性があります。最近、関節炎の痛みを抑える素晴らしい薬があるんですよ。従来の内服薬のような副作用がなくて。処方してあげますよ」

そのとき、初めて「リブレラ」という名の薬を知った。月に一度の注射で投与する。処方はしてもらったものの、実際に薬局でその薬を購入したのは、だいぶ後になってから。ラッコがある日、背中を痛そうにして体を丸めていた。もしかして関節炎となにか関係があるのではないかと、そこで初めてリブレラを注文した。スウェーデンでは、飼い主が薬局で薬を購入し、それを動物病院に持参して注射してもらう、という仕組みがある。もちろんすべての注射薬が対象ではないが、リブレラについてはそれが可能だった。なお、この方法を取ると獣医で直接購入する価格のおよそ半分になる。

投与後、その効果はすぐに出たわけでもなく、果たしてラッコの足取りがすごく軽くなったのかどうかよくわからなかった。本当は1ヶ月後に追加投与すべきだったのだが、しばらく放っておいた。

「このような薬は定期的に打った方が効果が出やすいですよ」

と獣医に聞いたのが一昨年の春ごろ。その後はできるだけ定期的に投与するようにした。それでも効果を実感できたのかというと、正直なところ相変わらずわからないままであった。ただ、「副作用がない」と説明されていたこともあり、私は昨年の10月末までこの薬を使い続けていた。もっとも、必ずしも一か月に一度という厳密な間隔ではなく、二か月ほど空いてしまうことも何度かあった。

一昨年の夏ぐらいからラッコは妙に体調を崩しやすくなり、ほぼ二か月おきに動物病院へ通うようになった。それまでの彼は、若いころから病気らしい病気をほとんどしていないほど元気だったのに。唯一は6年前に事故のように起きた胃捻転だ(生死を分ける恐ろしい疾患だが幸いにも手術は成功した)。

まず膀胱炎を発症した。そしてしばらくしてから肺炎にかかった(その時の様子はこの記事に記した)。さらに、夜中にえずいたり吐いたりする様子が目立つようにもなった。昨年の秋は肛門腺炎にもなり、これにはひどくびっくりした。というのも、うちの犬たちはBARFを食べているので、うんちはけっこうしっかりしている。なので排便時に、「ぴゅっ!」と肛門腺から液が自然に排出される様子を、私はよく目にしていた。特にラッコはそれを上手にやっていたからなおさらだ。

肛門腺炎の後、すぐにまた肺炎にかかった。

「歳だから、病気も多くなるのだろうな」

と、しょんぼりしながらこの状況を受け止めていたものの、ふと「ちょっと待てよ」と思った。これまでのことをよーく考えてみると、どうも共通点があるような気がした。いずれも、リブレラを投与してもらってから、だいたい10日ほど経ったころにラッコの体調になにかしらおかしなことが起きているような…?

前述したように、それほどきっちりと定期的に打っていない。にもかかわらず、カレンダーを見返すと、投薬してからおよそ10日から2週間後に体調を崩すことが繰り返されていたのがわかった。もしかしてリブレラの副作用…?? しかし獣医からは「副作用がない新しい薬!」と自信満々に説明を受けている。そのことを信じ込んでいて、よく自分でも調べたことがなかった。

そこで初めてグーグルで検索してみたのだ。すると、リブレラの副作用について触れているサイトがけっこうでてきた。飼い主の体験談、獣医師向けの解説、注意喚起を含む記事など。Facebookにはイギリスを中心としたリブレラ投与後の経過について情報を共有するグループ「Librela the Truth(リブレラの真実)」も存在していた。そこでは体調の変化や違和感、深刻な症状に至ったケースまで、実にさまざまな体験が投稿されている。このようなグループの投稿というのはたいてい1日にあっても2、3件なのだが、このグループでは毎日10件ぐらいの書き込みがある。

こうした個人の声の他にも、公的機関からの情報も公開されていた。ヨーロッパでは、欧州医薬品庁(EMA)を中心とした市販後監視の枠組みの中で、リブレラに関する有害事象の報告が集められている。そしてアメリカでは、2024年、米国食品医薬品局(FDA) がリブレラについて獣医師向けの注意喚起を発表していた。以下は、その一部である。

米国食品医薬品局(FDA)獣医医薬品センター(Center for Veterinary Medicine:CVM)は、さまざまな年齢の犬にリブレラ(一般名:ベディンベトマブ注射剤)を投与した後に報告された有害事象について、評価を完了した。

特定され、分析された有害事象には、以下が含まれる。
運動失調、発作、その他の神経学的症状(これには、対麻痺、横臥、尿失禁などが含まれる)、多尿、多飲。また、一部の症例では、これらの有害事象の結果として、死亡(安楽死を含む)が報告されている。

Zoetis(リブレラの製造元)の安全性情報によれば、承認後の副作用報告は非常にまれなレベルと評価されている。副作用として報告されている事象は、世界中で投与されたリブレラの用量あたり「1〜10件/10,000用量」の頻度に相当するということだ。


ラッコは気分がよければいつも通り遊び好きだし、散歩も毎日でかける。ただしすっかり後脚の筋肉がなくなってしまった。

ラッコのケースを獣医に話してみた。すると

「リブレラの副作用としては確かに膀胱の炎症については言及があるんです。でも、肺炎になったというケースは記されてないんですよ。リブレラの副作用かもしれないし、そうじゃないかもしれない。断定はできないですね…」

という見解であった。確かにそうだろう。もっともリブレラを投与される犬たちはたいていシニア犬だ。すでになんらかの持病があったり、表立ってはいなくともどこか体の調子がよくないことも大いにありうる。私も獣医のいうことには同意だ。とはいえ、ラッコのケースではあまりにも、リブレラの投与とその後の体調変化がパターン化しているので、私個人の中では「ひょっとして……」という疑念は残っている。それで、リブレラを打つのはもう金輪際やめにしたのだ。

11月の肺炎からいまだにラッコの体調は波があり、すぐれないままだ。