文と写真:藤田りか子

今年(2025年)12月、ノーズワークスポーツクラブから初の日本人ジャッジ8名が誕生する予定である。当クラブはスウェーデンノーズワーククラブのルールを基に活動しており、その教育委員であり公認ジャッジ、さらにはジャッジ&インストラクター養成資格を持つピッレ・アンデション氏を迎えて、2023年からインストラクター教育を開始した。今年の4月、新たに12名のインストラクターが誕生し、公認インストラクターは合計25名となった。そしてついに、その中でもノーズワーク経験が豊富でクラブ活動に積極的な8名がジャッジとなるのである。
これまでは日本に公認ジャッジが存在せず、スウェーデンからジャッジを招いて公式競技会を開催していた。そのため、年にせいぜい2回程度しか競技会を開くことができなかったのだ。しかし今後は日本国内にジャッジが誕生することで、競技会の開催数は一気に増える見込みだ。
競技会の開催頻度が増えるということで、この場を借りて、ノーズワークファンの皆さんに伝えておきたい。それは、多くの競技会の運営にはヘルパーやボランティアの存在が欠かせないという点である。なので、機会があれば自ら手伝いを申し込むのは非常に望ましいのだ。そのところ、ぜひよろしくお願いします!
スウェーデンでは、競技会は単に参加するだけでなく、自分が出場しないときには進んで運営を支えるのが一般的だ。そのような協力によって、競技会の継続が可能となっている。ノーズワーク競技会であれば競技会責任者や計時係、ガンドッグ競技会であればダミーを投げる役を務めるなど、担う役割はドッグスポーツによって多岐にわたる。
もちろん主催者がエントリーフィーで多少の収益を得るのだが、会場費、そのほか人件費などの負担によって収支がトントン、あるいは赤字になることも珍しくない。競技会は「主催者がサービスを提供し、参加者がそれを購入する場」ではなく、「皆で作り上げていく場」であるという認識を持ってほしい。そう、自分が競技に出場しているときには、誰かが支えてくれている。だからこそ次は自分がその支え手となる番である。こうした相互の支え合いによってこそ、競技会、およびそのドッグスポーツは存続し、発展していく。
私もこれまでにスウェーデンでガンドッグやノーズワーク競技会のボランティアを何度も経験している。主催者からランチやフィーカの提供という配慮はあるが、ガソリン代は支給してくれない。時に車で2時間かけて会場に向かうこともあってもだ。ただし、スウェーデンケネルクラブにはボランティア促進のために、競技会にエントリーするための優先権を得られる制度がある。その特権以外は、完全奉仕!
とはいえ、競技会のボランティアは必ずしも「自己犠牲」や「恩返し」だけの感情で行う必要はなく、十分に「エゴ」な動機で取り組めることも強調しておきたい。なんといってもボランティアになることで競技会を客観的に観察できるし、自分が競技に臨む際の大きな学びとなる。模範演技を見るのも有意義だし、「失敗ケース」を見るのも、これもまた反面教師としての価値がある。というか、私はむしろ後者からいろいろ学んできたかもしれない。

計時。タイムが勝敗を分けるノーズワークの競技会にはなくてはならない大事な存在!
そして、ノーズワーク競技会では、それを最もよく観察できる“おいしいポジション”が計時係なのである。計時係は、ハンドラーと犬の動きを最前列で見られるだけでなく、ジャッジが「なぜあそこにハイドを仕掛けたのか」という意図を知れる稀なるチャンス。参加者が入れ替わるちょっとした時間の合間に、ジャッジによっては舞台裏をいろいろ話してくれることもあるからだ。
前置きがまたもや長くなってしまった。今回は、計時係をしたことで学んだノーズワーク競技会攻略方を記したい。題して「”計時係”は見た!」である。レベルはNW2(ビギナークラスの次のクラス)ではあるが、NW1で競っている人も参考になるのでぜひ読み進めて欲しい。

