自分の子はどの子?母犬の認識に影響する子犬の鳴き声

文:尾形聡子


[photo by Bellakadife]

赤ちゃんはよく泣くものですが、その理由はさまざま。お腹が空いた、眠たくなった、おむつが気持ち悪い…などなど、自ら感じる不快を近くにいる養育者に伝えるためです。言葉を使えず、自ら動くことのできない赤ちゃんにとって、声を出すことは周囲とコミュニケーションをとるための重要な手段です。

声のボリュームやトーンなどには個人差がある上、それを聞く大人の聴力や住環境の静かさなどもそれぞれに影響するため、赤ちゃんの泣き声に対する周囲の反応はケースバイケースです。しかし人は単胎動物であるため、一度の妊娠で出産する赤ちゃんはひとり。双子の出生率は1%程度とのことですので、親の多くは赤ちゃんの泣き声を誰が発したものかを聞き分ける必要はありません。

一方、多胎動物である犬は一度の妊娠で多数の子を産みます(ただし、超小型犬や短頭種の場合は難産になりやすく一腹の出産頭数が少ないです)。乳首の数よりも多い子犬を出産するケースも稀ではありません。犬の乳首は通常左右に5個ずつで10個ですが、個体差があり、それより少なかったり多かったりすることもあります。

ちなみに藤田りか子さんの愛犬アシカちゃんは初産で9頭の子犬を出産。そのうちの1頭が、このところメキメキとドッグスポーツ競技会で好成績を出しているミミチャンです。9頭でも十人十色。犬に一卵性双生児が誕生するのは非常に稀で、複数の受精卵が同時に成長していくのが多胎動物です。それゆえ同じタイミングで同じ親から生まれてきた子犬たちも幼少のころからすでに個性や体格差があるもので、たとえば、きょうだいであっても、生後8週にもなると成長ぶりに差が生じ、体の大きさの違いが顕著になることはよくあります。

一度の出産で複数の子を産む犬にとって、乳児期の子犬への個別対応は少しでも多くの子孫を健康に育てるために必要とされる養育行動です。そこで重要になってくるのが子犬の発声。独り立ちできない状態の子犬は、人の乳児と同様に声を出すことで母犬に自分の状態をアピールし、養育行動を引き出していると考えられますが、そのような子犬の発声が母犬の養育行動にどのように影響を及ぼしているのかはこれまで研究されていませんでした。そこで、フランス、ポーランド、カナダの国際研究チームは、子犬の発声における母子間の相互作用を明らかにしようと

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