文:尾形聡子
[photo by bellakadife]
日本では現在、ペットショップの店頭での子犬の販売は禁止されていません。イギリスやフランス、ドイツ、スウェーデンなどのヨーロッパの多くの国では犬の店頭販売が規制されていますが、アメリカのニューヨーク州にもその流れがやってきており、2024年末から店頭販売が禁止となりました。
世界的になぜそのような動きになっているのかは犬曰くで何度もお伝えしてきた通りで、ペットの店頭販売と大規模な商業的繁殖を行っている「パピーミル」との関連が指摘されてきたためです。子犬や子猫を産ませるためだけに劣悪な環境下で飼育される親となる動物だけでなく、生まれてくる子どもたちも店頭に運ばれるまでの間はそこで過ごすことになります。もちろん商業的繁殖施設の状態は千差万別で、すべての施設が劣悪な環境ではないでしょう。ですが、少なからず劣悪な環境である施設は存在し、そのようなところで誕生した子犬においては肉体的な健康度だけでなく、メンタルへも強く、かつ、長期にわたって悪影響を及ぼすと言われて久しく、動物の福祉に反する可能性が極めて高いと世界的に認識されているからです。
しかし、犬猫の保護活動における「殺処分ゼロ」というようなわかりやすいスローガンがないためか、あるいはペットショップでは生きた動物が展示されていて、すぐに購入できるというのが当然と感じすぎているためか、残念ながら、日本での動物の店頭販売についての状況はそれほど変化していないように感じています。動物の福祉を無視した繁殖を行う業者にも問題がありますが、出自が明らかでない動物を店頭で購入する人が存在し続けているのも大きな問題のひとつです。そのような需要と供給のループが続く限り、安易な購入によって飼育放棄が生ずる可能性が高まるということなど、さらに問題視されにくい側面なのかもしれません。ただし日本でもブリーダーや繁殖業者に対する法的な規制は厳しくなっているのが現状です。