犬が犬を咬む要因を探る〜チェコ共和国の研究より

文:尾形聡子


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3年ぶりにコロナによる行動規制がなくなり、過ごしやすいこの陽気。愛犬と一緒に外に出かけることも増えているのではないでしょうか。そんなときに気をつけなくてはならないのは咬傷事故です。コロナ自粛で新しい環境や見知らぬ人や犬に慣れていない犬の場合、ストレスや恐怖から攻撃的な行動を取りかねません。

咬傷事故により手術を余儀なくされるような大怪我を負ってしまうこともあれば、最悪命を落としてしまうこともあります。それは、人も犬も同じことです。ただし、これまでの犬の攻撃性に関する研究の多くは基本的に「人に対する攻撃」に焦点を当てているものでした。「犬種は?年齢は?人への攻撃性が高まるリスク要因」にて紹介した研究がその一例です。

ただし、攻撃行動とひとことで言っても、攻撃に至るモチベーションはさまざまです。犬曰くで何度も伝えてきましたように、攻撃行動の裏には恐怖や不安がある場合が多く、そのような恐怖や不安を抱きやすくなる要因は社会化不足、生活環境、年齢、性別など多岐にわたります。心身を病んでいて攻撃的になることもあれば、上に挙げた研究にあるように、遺伝的な側面、すなわち犬種により攻撃性の強さに違いがあることも示されています。さらに犬の攻撃の動機を理解する上で知っておいて欲しいことは、藤田りか子さんの「咬む犬のきもち:猟欲 vs 恐怖による攻撃行動、その感情の違いについて」にてとても丁寧に説明されていますので、ぜひ併せてご一読ください。

さて、上述しましたように犬の攻撃性についての研究は主に対人であり、「他の犬への攻撃」については意外に多くありません。犬曰くでは、リーシュ・アグレッションのある犬と無い犬をホルモンレベルで比較した「ふたつのホルモンのバランスが影響~犬の攻撃性と親和性」や、広く攻撃性を調査した「犬の攻撃性には何が影響する?〜形態、環境、社会的要因との関係」などで紹介してきましたが、まだまだ研究数が少ないのが現状です。

そこで、研究の余地がある「対犬への攻撃」に着目したのがチェコ共和国のメンデル大学ブルノの研究者たちでした。彼らは家の外での他犬への攻撃だけでなく、加害犬の自宅内での他犬への攻撃も含めるというとても珍しい調査を行い、家の中とそれ以外の場所とで犬が他犬を咬む要因が異なるかどうかを検討しました。


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咬傷事故を起こしやすいのはどんな犬?

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