文:尾形聡子
[photo by Animal People Forum]
飼育している犬や猫の頭数が、飼い主の能力や経済力、生活空間を超えて意図せずに異常に増えてしまい、十分な飼育ができなくなることを多頭飼育崩壊といいます。ネグレクト状態での生活を強いられ、ボロボロの姿になった動物が狭い空間にひしめき合っている様子を、一度はニュースなどで目にしたことがあるのではないでしょうか。
ペットの適切な飼育ができなくなると、飼い主の生活状況(経済面や衛生面)が悪化するばかりか、犬や猫などの動物たちは不衛生で不十分な生活空間で、適切な医療を受けられず、必要な食糧や清潔な水が与えられないままの暮らしを強いられることになり、心身ともに相当なストレスを抱え続けることになります。そして、多頭飼育崩壊が起これば現場周辺にまで悪臭や騒音の被害が及ぶこともあり、近隣との関係が悪化せざるを得ないこともあります。さらには飼い主と住居を別にする親族がその責任の一端を担わなくてはならない事態が生ずる可能性も出てきます。
日本では、環境省が多頭飼育崩壊を起こさないようにするためのガイドラインを2021年に出しています(「人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン」)。多頭飼育崩壊には飼い主自身の病的な問題も関係する上に、飼い主の社会的孤立や生活困窮などさまざまな社会問題が絡んでくるため介入することが難しく、よって、未然に防ぐことも困難な現状があります。
とはいえ、もしも近隣の人が多頭飼育崩壊を起こしているのではないかと感じたとき、居住している地域の保健所や社会保険事務局などに連絡をすることはとても重要です。被害を最小限に食い止めるには、少しでも早く崩壊現場に介入することが求められます。自治体によっては犬猫の多頭飼育をする場合(多くは10頭以上の犬猫を対象)には届出を必要とすると定めているところもあるのもそのためです。多頭飼育崩壊を見過ごさないようにする周辺住民の心持ちも崩壊予防対策として大切です。
アニマルホーディングという病気
さて、このような多頭飼育崩壊は日本に