熟成ニンニク抽出液、犬の歯肉炎への効果が認められる

文:尾形聡子


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体の健康維持には歯の健康が大事であることは、近年さまざまな研究により示されています。歯の病気の中でも特に歯周病による悪影響は大きく、歯を失うばかりか動脈硬化や心疾患、糖尿病、脳梗塞などの全身疾患、さらには認知症の発症や進行とも関係があることが知られています。

また、歯周病は年齢を増すごとに罹患率が上がっていき、日本人では45歳以上になると過半数が歯周病に罹っているそうです。犬においても人と同じく、歯周病が心疾患や腎疾患、認知機能の低下など全身の健康に悪影響があることや、年齢が高くなるほど罹患率も高まることがわかっています。2020年に発表されたレビューによれば、犬の歯周病の罹患率は44〜100%、そして大型犬に比べて小型犬に多いことが報告されています。

飼い主としてはつい歯磨きガムに頼りたくなるものですが、残念ながらそれだけでは歯をきれいに保つことはできません。犬にとっても歯磨きがどれだけ重要であるかについては、人の歯医者さんが寄稿してくださった以下の記事をぜひご一読いただければと思います。

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とはいえ、頭では歯磨きの重要性を十分にわかっていても、なかなか続けられないのが人の性。スウェーデンでの調査では、犬の歯磨きを毎日している人はたったの4%!オーラルケアが進んでいるスウェーデン、その重要性がわかっているだろうところにこの数字とは、犬の歯磨きを継続することがいかに困難かを示しているとも言えるでしょう。

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[photo from Adobe Stock] 残念ながらガムだけでは歯は綺麗にならないのです…。

熟成ニンニクの秘めたるパワーを犬に

そんな飼い主さんに朗報!となる可能性を大いに秘めた、期待感高まる研究が発表されました。熟成させたニンニクの成分に、犬の歯肉炎の治療効果、さらには口臭の減少や歯周病の原因菌の抑制、口腔内免疫を増強する効果があることが突き止められたのです。この研究を主導したのは鹿児島大学の大和修教授。大和先生は柴犬に発症するGM1ガングリオシドーシスを発見し、日本における犬の遺伝病研究のパイオニアとして長年にわたり研究を続けられています。これまでに犬曰くでも変性性脊髄症(DM)神経セロイドリポフスチン症についての大和先生の研究を紹介してきました。

大和先生は遺伝病の研究と並行し、犬に与えるのはNGとして知られるネギ類やニンニク(溶血性貧血を引き起こすため)についての研究も続けられてきました。その中で、生でも加熱しても犬にとって毒性があるニンニクを熟成させると、毒性成分が変化して安全になるうえに、さまざまな疾患予防に寄与する機能物質に置き換わることに着目します。さらに、人を対象とした研究で、熟成ニンニク抽出液には抗炎症作用や抗がん作用があること、高血圧、動脈硬化、メタボリックシンドローム、軽度から中程度の歯周病を改善するという報告がされていることから、犬において罹患率の非常に高い歯周病を対象として研究を進めてきました。

鹿児島大学と湧永製薬の研究チームは、熟成ニンニク抽出液を犬が摂取することへの安全性をしっかりと確認(2018年)した上で、熟成ニンニク抽出液を乾燥させて粉末状にしたものを犬に8週間与えると、口腔内の健康改善に効果がある(歯肉炎の治療効果、口臭の減少、歯周病の原因菌の抑制、口腔内免疫の増強)ことを示す結果を得ました。

この結果を受け研究チームは、熟成ニンニク抽出液は軽度の歯肉炎や口臭の治療および予防のためのサプリメントとして使用できる可能性があると結論しています。ただし、今回の研究は軽度な歯肉炎を持つ単一犬種(ビーグル)を対象としていたため、より重度の歯肉炎あるいは歯周病に罹っている犬、さまざまな犬種を対象として、熟成ニンニク抽出液の有効性を確認するさらなる研究を行う必要があると述べています。


[photo from Adobe Stock] 熟成ニンニク抽出液はあらゆる犬の救世主になるかもしれないけれど、やっぱり歯磨きも大事なことはどうかお忘れなく!

毎日の歯磨きが重要なのはもちろん変わることはありませんが、完璧なブラッシングをすぐにできるとも限りません。ですので、歯磨きと並行してこのような効果のあるサプリメントを使うとさらに予防効果を高めることが期待されるのではないかと思います。特に、歯周病になりやすい小型犬が多い日本においては、犬の口腔内健康についてより強く認識しておく必要があるかもしれません。人も犬も歳をとっていくとどうしても歯周病に罹りやすくなっていきますが、口腔内のみならず全身の健康、そして認知能力の維持のために少しでも発症年齢を遅らせられるようにしたいものですね。

【参考文献】

Therapeutic effect of aged garlic extract on gingivitis in dogs. Frontiers in Veterinary Science. 2023

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