文:尾形聡子
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私たちが水を飲むのにはコップを、ご飯を食べるときにはお茶碗を使うのと同じように、愛犬用には水飲みボウルやご飯専用のボウルを使うものです。もちろんそれでなんら問題はないものの、ご飯やおやつを与える際に環境エンリッチメントのひとつである「採食エンリッチメント」を取り入れている人もいるのではないでしょうか。
採食エンリッチメントとは食べ物の種類や与え方に変化をもたせ、食べるという行動の多様性を増すことで動物の生活の質を高める方法です。もともとは動物園や水族館などの飼育動物に対して広く取り入れられるようになった方法で、常同行動など動物たちのストレス行動を減少させることがわかっています。
犬においても環境エンリッチメントを生活の中に取り入れ、犬という動物が持つ自然な習性や欲求を満たすことは大切です。環境エンリッチメントには採食エンリッチメントのほかに、空間エンリッチメント、感覚エンリッチメント、社会的エンリッチメント、認知エンリッチメントなどがありますが、要するに、さまざまな環境刺激を日常の中に追加し、より満たされた生活を送れるようにしようというものです(くわしくは「犬にとっての環境エンリッチメントとは?~藤田りか子さんセミナーレポート(2)」をご覧ください)。
犬の生活の質を高めるためにできることのひとつが採食エンリッチメントです。食べ物の種類を変えるだけでなく、犬の「食べる」という行動に変化をもたらすためにコングや知育玩具などの道具がよく使われます。このような道具を使えば、犬はフードボウルから簡単に食べるよりも、あるいは人の手からおやつが口に放り込まれてくるよりも、自ら頭を使い、時間を使うことになり、食べ物を得るだけでなく別の刺激も得ることができます。さらに、犬は食べ物を自由に与えられるよりも、食べ物を得るために何かしら働くことを好む傾向があることが観察されています(コントラフリーローディング)。
さて、採食エンリッチメントは犬の生活の質を本当に高めているのでしょうか。