「短頭種のいびきってカワイイよね!」って思考停止してやいないか?

文:北條美紀


[Image by Chathura Anuradha Subasinghe from Pixabay] 「かわいい!」の代表とも言える子犬。その可愛さには生物学的な戦略があるのだけれど…

前々から、カワイイ、かわいそうという言葉を耳にするたびに「この言葉たちは曲者だな」と思っていた。どう曲者なのかを考え続けていたところに、「短頭種の気道閉鎖症候群にはどんな病気のリスクが生ずるのか」の記事が届いた。読んでいて分かったのは、カワイイ、かわいそうという言葉は人を思考停止させるということだ。他にも、当たり前、大丈夫など、目の前の事実をなかったことにする思考停止ワードがあちこちに散らばっていた。

短頭種に多くみられる気道閉塞症候群BOASについて知ったときの衝撃はとても大きかった。そもそも、短頭種には「体に対する頭の比重の大きさ、大きな額、顔の中の低い位置にある大きな丸い目、小さい鼻と口、ふっくらした体、短い手足、ぎこちない動作」といったカワイイ要素、ベビー・シェマ(Baby Schema、赤ちゃんらしさ)に近い要素があったのだろう。ベビー・シェマは、子犬にも子猫にも、人間の赤ちゃんにも等しく備わっている特徴で、乳幼児が大人から愛情行動を引き出すのに役立つ。だから、子犬や赤ちゃんを見た大人は、思わず微笑みかけたり手を伸ばしたりしてしまう。これは動物が進化していくための戦略として獲得した生得的な特徴だ。

通常であれば、ベビー・シェマは成長すれば消失する。それを、成犬になっても短頭種に特有の「カワイイ見た目」を際立たせ続けるために、より特徴的な個体を選んで交配し続けた結果、本来の犬種の健康を損なうところまできてしまった。ここに至る過程で、さまざまな身体的不具合を生じていただろう。その問題に目をつぶり耳をふさいで思考停止し続けられたのは、

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