北欧発、キャバリアとフレンチ・ブルドッグを別犬種と掛け合わす、犬種改良への新たな道

文:藤田りか子

[Image by Fran • @thisisfranpatel ]

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルそしてフレンチ・ブルドッグの多くが遺伝性疾患を抱えている、という悲しい事実について、犬曰くでは記事としてでこれまでも何度か取り上げてきた(記事リストについては本記事最後の【関連記事】に示す)。こんな状態でブリーディングし続けるのは倫理的に正当化されるものなのか、は欧米の犬の専門家、犬種愛好家、犬種クラブ、ブリーダー、動物福祉団体、獣医師などの間で久しく討論されてきたことである(残念ながら日本では議論はもとより、ほとんど注目を受けていないトピックスだ)。そしてとうとう昨年では動物保護団体の訴えにより、ノルウェーの裁判所はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルとブルドッグのブリーディングを違法にするという判決を下した。このニュースは日本でも報じられたので記憶に新しい方もいるはずだ。

さて、同じ北欧諸国であるスウェーデンとフィンランドがつい最近、遺伝性疾患に苦しむ犬種についてノルウェーとは異なる別の取り組みを示すこととなった。今年6月15日にフィンランドケネルクラブが、そして翌日にはスウェーデンケネルクラブが、各国キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル犬種クラブのクロスブリーディングプロジェクト要請に対してゴーサインを出したのだ。プロジェクトは秋から始まる予定だ。

クロスブリーディングとは、別犬種をかけて犬種改良をする試み。フィンランドでは、フレンチ・ブルドッグも今回のクロスブリーディングのプロジェクトに含まれている。ヴィクトリア朝時代(1837-1901年)から連綿と続いてきた非科学的かつ非倫理的な「犬種繁殖」の伝統を打ち破るべく、北欧は犬種の健全性を守るために新たなブリーディングのありように挑戦するという気構えだ。なお北欧のクロスブリーディングによる犬種改良の試みは今回が初ではない。すでに他の犬種(ジャーマン・ピンシャーやクランバー・スパニエル等)でも行われてきており、成功をおさめている。それについての記事は「クロスブリーディング– 北欧における遺伝的多様性と犬種健全性維持への挑戦」を参照に。

ヘルスプログラムだけではもう追いつかない

多くの国においてキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルには

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