ドーベルマンの遺伝的多様性と遺伝病のリスク、系統による違い

文:尾形聡子


[photo from Adobe Stock]

日本ではジャーマン・シェパードにも劣らぬ人気のドイツ原産犬種、ドーベルマン。大型犬の飼育頭数は全体的に減少していますが、JKCへのドーベルマンの登録犬数は決して少なくはなく、2000年代に入ってから登録頭数30位代を推移しています。2022年の登録件数は390頭で、大型犬だけをピックアップしていくと8位に位置しています。

ドーベルマンは19世紀後半に、カール・フリードリヒ・ルイス・ドーベルマン氏によって作出された犬種で、犬種名は作出者の名前から来ています。ドーベルマン氏は税金徴収人としての仕事柄、自身の身を守るべくこの犬種を作り出したと言われているそうです。その後、訓練性のよさから、警察犬や軍用犬としても高く評価されてきた犬種です。1920年代になりはじめてドイツから輸出され、以降、警察犬などの作業犬としてだけでなく一般の家庭犬としても広く飼育されるようになりました。現在の繁殖において、作業犬としてなのか、ショーに参加するためなのか、あるいは家庭犬としてなのかなど目的によって系統が分かれている犬種でもあります。

安定的な人気を維持しているドーベルマンですが、拡張型心筋症(DCM)に罹りやすい犬種としても知られており、大型犬の中でも、たとえばゴールデン・レトリーバーなどと比べると決して寿命は長くない印象を持っている方も多いことでしょう。実際のところ、英国ケネルクラブに登録されている犬の寿命を調べた2014年の研究では、調査対象とされた25犬種のうちもっとも寿命が短かかった(死亡時の年齢の中央値が7年8ヶ月)ことが示されています。ですがこのような研究は繁殖の目的の違いによる区別はされずに調査が行われるのが一般的です。

そこで、オーストラリアとアメリカの国際チームは、犬種の中でドーベルマンがどのような地理的なサブグループに遺伝的に分かれているか、多様性はどうなのかについて詳細に調査を行いました。


[photo from Wikimedia]  第二次世界大戦、硫黄島の戦いにて活躍するドーベルマン。

場所、繁殖目的による遺伝的違いはあるのか

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