ペットロス〜できるだけ納得のいく納骨を

文と写真:尾形聡子


在りし日のタロウとハナ。足繁く通った墓地で一番好きだった桜の下で。

2020年の2月、そして2021年の9月に長年連れ添った愛犬たちが立て続けに旅立っていった。年齢からすれば16歳と17歳だったから、中型犬としては大往生で、納得できる寿命だったし、お別れの時を覚悟する時間もしっかりあった。だからなのか、理性というかなんというか、「こうあらねば、しっかりしなければ」という気持ちが心の奥底に居座っていたようで、表面的には日常生活に支障が起きてしまうようなひどいペットロスの状態(ペットロス症候群)にはならなかった。

前回のブログでは、どんなに覚悟ができていようとも、愛犬との別れにより否が応でも日常生活が大きく変わってしまうことについて書いた。そしてお別れ直後の、いわば脳が異常に興奮し続けていた私にとって、悲しみを和らげてくれ、気持ちを落ち着かせてくれた意外なことについてお伝えした。今回は、2頭目と別れて半年、変化した生活を少しずつ受け入れ始め、気持ちの整理を進めようと思い行った「納骨」についての話をしたいと思う。

ペットロス〜愛犬との別れのかなしみを和らげてくれた意外なこと
文:尾形聡子最愛の犬との別れは、大切な人を失ったり亡くしたりしたときと同じくらい、私たちに大きく深い悲しみをもたらす。犬に限らずペットとの愛着関係が築かれ…【続きを読む】

納骨を思い立ったきっかけは引っ越し

長年犬たちと一緒に過ごした家にひとり暮らすのに、なかなか慣れることができなかった。真っ暗で静まり返った部屋に帰るのが何より嫌だった。それぞれの犬たちがくつろいでいた場所につい目がいったり、犬たちがあちこちに残した汚れを見たりするたびに、温かい思い出が蘇ってくるのと同時に胸がしめつけられもした。思い出がたくさん詰まった部屋だったけれど、今が引っ越すタイミングなんだと思った。

引っ越しするにあたり、大きな二つの骨壷をどうしようか悩んだ。思い出のありすぎる下町から少し離れたいという気持ちがあったため、犬たちにとってあまり馴染みのない場所に連れて行くのはどうかと迷ったのだ。だから、どこに引っ越しても大丈夫なように、彼らと一緒に歩いていた地域で犬の納骨をしてくれるお寺がないか探すことにした。

散歩をしていた地域は寺町と言われるだけあり、星の数ほどお寺がある。それでも犬を入れてくれるお墓があるのを知っていたお寺は、散歩中に偶然発見していた二つだけ。まずはその片方のお寺へと向かったが、檀家しか受けつけられないとの返事だった。どこもそうなのかな…と思いつつ、もう一方のお寺に直接聞きに行く前に、インターネットで検索をしてみることにした。

すると、なんと、毎日のように通っていた道沿いにあるお寺が、犬を受け入れているとの記載を発見!そのお寺の敷地内に何度か足を踏み入れたことはあったのだが、ペットのお墓があるなんてまったく気がつかなかった。早速メールをしてみたところ、檀家でなくでも大丈夫との返事が。そのお寺の立地以上にいいところなどない。インターネットに情報を載せてくれていたことに、これほどまでに感謝したのは初めてだった。


タロハナを預けようと決意したお寺。ほぼ毎日のようにこの前を通っていた。

そのお寺ではペットの納骨は年に3回(春と秋のお彼岸と夏のお盆)行っているという。それより前に骨壷を持っていき、お経をあげてもらって納骨まではお寺の境内に安置してもらうという流れだった。納骨当日は私のほかにもう一組家族がきていて、納骨をした後にお坊さんがお経をあげてくれた。


お経をあげてもらい、納骨までここに安置されていた。


納骨前のお墓。こちらのお墓に納骨してもらった。

引っ越しは納骨前に終え、下町の隣の地区に移った。が、お寺まで歩いて行けない距離ではない。気軽にお参りに行けるという安心感があるのはありがたい。

ペットロスとゆるりと付き合っていく

引っ越した部屋には分骨した小さな骨壷を二つ並べておいている。これまで気持ち的に飾ることができなかった写真を、骨壷の脇におくことができるようにもなった。犬たちにとって慣れ親しんだ場所にあるお寺で、お坊さんも親切で丁寧に対応してくれたことで、とても納得のいく納骨ができたと思えたのが大きい。

でも、だからといって、必ずしもペットロスと完全にお別れできたわけではない。時間が過ぎていくにつれ、タロウとハナの写真をみては涙したり、彼らのことを思い出したりする頻度はだんだん減っていくかもしれないが、決してゼロになることはない。いつか新しい犬を迎えたとしても、彼らへの気持ちは私がこの世を去る日まで存在しつづける。

納骨や引っ越しという行為はひとつの気持ちの区切りにはなった。けれど、もしかしたらタロウとハナに対するペットロス状態は続いていくのかもしれない。ならば、自分なりにペットロスと一生ゆるりと付き合っていけばいいのかも、と、今はこんなふうに考えるのが、自分にとって無理がないと感じている。

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