文:尾形聡子
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犬の認知能力は成長に伴い発達していき、老化によりその機能は低下していきます。人と同様に犬も寿命が伸びている昨今、高齢犬において、記憶を失う、方向感覚を喪失する、徘徊する、社会的相互作用や睡眠パターンが変化するなど人の認知症と同じような症状が見られることがあります(「最近集中してくれない・・・犬に見られる認知機能障害の徴候」参照)。認知機能障害と呼ばれる犬の病気は脳や神経の機能低下が原因となり発症します。また、似ているのは症状だけではありません。認知症の中のアルツハイマー型認知症と犬の認知機能障害にはアミロイドβの蓄積など脳組織の変化に類似性があることもこれまでの研究により示されています。
脳の老化は生物にとって自然現象ではあるものの、日常生活に支障が生じれば単なる「物忘れ」で済ませることはできず、人の認知症とその家族の置かれる状況と同様に、犬の認知機能障害は飼い主にとって大きな負担となります。現時点では人でのアルツハイマー病を完治する方法はなく、新しい治療方法や予防方法の開発が望まれている中、犬の認知機能障害への理解を深めることが犬と人の両方の認知疾患の治療に役立てていける可能性があると考えられています。
犬の認知機能障害に関する研究は決して少なくなく、認知機能障害の評価方法もいくつか確立されています。ですが、これまでの研究では対象とされる個体数が少なく、予防的な対策がとれるような結論を導きだすには至っていませんでした。そこで、ワシントン大学の研究者はその評価尺度(CCDR)をベースに大規模調査を行い、年齢以外に犬の認知機能低下を予測できる要因があるかどうかを調べました。
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