過活動や衝動性、不注意な行動はどんな犬に多くみられがち?

文:尾形聡子


[photo by Ville .fi]

人のADHD(注意欠陥・多動性障害)と呼ばれる神経発達障害は、「不注意(集中力が続かず、簡単なミスをすぐにする)」「過活動・多動性(じっとしていられない)、衝動性(我慢できずにすぐ行動にうつす)」という症状が一般的に見られます。私が生まれた頃にはなかった病名、ADHDは、その診断名ができてからというもの増加し続けており、2018年には世界全体での有病率は2〜7%(平均5%)、さらに、少なくとも子どもの5%がADHDの診断基準をわずかに下回るが日常生活に困難をきたす過活動、衝動性などを抱える状況にあるとの報告がされています。

人の精神医学界にADHDという病名が登場してから、昨今、人のADHDに見られる症状と似た行動を示す犬がいることに注目が集まり、犬を対象とした学術的研究が進められています。なぜなら犬は人と環境を共にして暮らし、行動評価の信頼性が高い動物であること、そして犬種特異的なDNA構成を持つことから遺伝的な背景を突き止めやすいと考えられているためです。これまでの研究から、犬は行動的症状のみならず、生理学的にも遺伝学的にも共通要因があることが示され、人のADHDに処方される薬にも反応することがわかっています。

ただし、人は病名に引きずられがちな性質を持つことに十分な注意が必要です。それについては北條美紀さんの「「あなたの犬は分離不安症です」その1~病名は誰のため?」を是非ご一読ください。そこでは「過剰診断」が横行している可能性があることに警鐘を鳴らしています。さらに、過活動や衝動性、不注意な行動は、とりわけ子犬時代には一般的に見られるものでは?と、藤田りか子さん家のニューフェイス、ミミチャンもADHDと言わんばかりの症状を3ヶ月齢のときに見せていたと「お宅の犬、本当にADHD?」に綴られています。

仮にそのような症状を見せ続けているからといって、一概に犬が人同様の神経発達障害を抱えているのかどうかは簡単には判別できず、また、犬の場合には日常的に満たされない肉体的・精神的欲求が根底にあったり、社会化や自己抑制力のトレーニング不足が原因になっていることも考えられます。ですので、まずは病名の存在に安易に頼りすぎず、日常生活を見直すことが重要です。

一方で、日常生活を見直してもどうしても状態が変化しないと、必要以上に自分自身を責めてしまうこともあるかもしれません。しかしそれでは問題の解決にはつながらず、犬だけでなく飼い主のQOLをも大きく低下させてしまう恐れがあります。そのような場合にはひとりで悩まずに、行動専門のトレーナーや獣医師に相談する勇気を持つことが大切です。

さて、それではフィンランドのヘルシンキ大学の研究者らによる新しい研究を紹介したいと思います。ADHDの症状である過活動や衝動性、不注意な行動はどんな犬種、そしてどんな生活環境の犬に見られがちだったでしょう?

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