文:尾形聡子
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犬の性格や行動は、当然のことながら、犬種、性別、年齢など犬自身のステータスによって異なる傾向にあります。また、飼い主の性格や犬との愛着関係などにも影響を受けていることが近年の研究により示されてきています。たとえば、犬の攻撃性は飼い主の神経症傾向や両者の愛着スタイルに影響されていたり、飼い主との愛着スタイルが安全かどうか、回避的か不安なものかなどによって犬の分離不安の状態に影響を及ぼしたりすることがわかっています。
飼い主と犬は性格が似ているという、ある種、都市伝説的な話題についても科学的に証明されています。それについては以前「犬と飼い主はお互いの性格をうつす鏡?」にて紹介しましたが、その後、別の研究チームにより発表された研究でも同様に、犬の性格は飼い主に似てくるという結論が出されています(以下の記事を参照ください)。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/030500141/
そもそも犬は人の感情を嗅ぎとることができる優れた嗅覚を持ち、そして、自らもそれに影響される動物です。その研究を行なったイタリアのナポリ大学の研究者らは、犬が人の感情から受ける影響の性差についての新たな論文を発表しています。それによれば、基本的には以前の研究と同様に人の恐怖のにおいに対する反応が大きかったものの、そこには性差はみられませんでした。しかし、幸せなにおいについてはメスの方がオスよりも強く反応する行動をみせていたそうです。
と、こんなふうに、程度の差こそあれ、犬は飼い主の性格や行動の影響を全身に浴びて生活を送っているといっても過言ではないでしょう。犬の性格や行動は数々の要因が絡み合いつくられていますが、少なからずそこには飼い主自身の要因も含まれているのです。
犬の行動研究に欠かせない「C-BARQ(犬の行動解析システム)」を開発したアメリカのペンシルベニア大学、ジェームス・サーペル教授が率いる研究チームは、行動治療を受けにきた犬たちの治療結果が、飼い主の性格や愛着などの要因とどのような関連があるかを調べ