文:尾形聡子
犬を飼ったら毎日散歩。たとえ犬と暮らしたことがなくても、多くの人々が犬の日常生活に散歩が必要なことは知っていると思います。しかし、病気や老化など犬のコンディションを考えた上ではなく、犬と暮らしていても定期的に散歩に行かない人や、中にはほとんど散歩に行かない人もいるのが現状です。
国によって状況に差はあると思いますが、散歩を続ける人と続けない人の両者がいるのはなぜなのでしょうか。イギリスのリバプール大学の疫学研究者が、西オーストラリア大学の研究者らと調査解析を行い、その結果を『BMC Public Health』に発表しました。
犬の散歩へのモチベーションや励みを “ラッシー効果”と名付けた研究チームは、ラッシー効果の要因が何であるかを知るために、オーストラリアはパースに暮らす629人の犬の飼い主からデータを集めました。これらの対象者は、西オーストラリア大学が進めている RESIDE研究(RESIDential Environment Study)に参加している1,813人の中うち、犬と暮らしている人々です。ちなみにRESIDE研究では、都市生活を送る人々の健康に、環境要因や身体的活動(散歩や自転車など)がどのように影響するのかを調べるため、10年にわたって行われている Population Health(集団の健康)研究です。
研究者らは、犬が飼い主自身を散歩へと促す励み(Encouragement)と、犬と暮らすことが飼い主自らの散歩へのモチベーションをより高める、という観点から、それらに関連する要因を解析しました。
その結果、より大きなサイズの犬であること、より犬との間に愛着(attachment)があること、犬が散歩に行くと楽しむのを知っていること、そして家族からの散歩への評価と理解があることは、励みとモチベーションの両方にプラスに働いていることが示されました。
逆に、家庭に犬の散歩を主に行っている子どもがいること、散歩を妨げる犬特有の問題点があること(複数頭の散歩が困難、ほかの犬におびえたり攻撃的になったりして制御が困難などの要因)は、励みとモチベーションの両方にマイナスに働いていることがわかりました。
さらに、モチベーションだけに影響をしていたのは、プラス要因として散歩に行くと吠えが減るということでした。また、マイナス要因としては、飼い犬が太りすぎ、かなりの高齢、病気であること、そして配偶者またはパートナーが主に散歩を行っていることに関連性が見られたそうです。
犬との散歩を楽しく続けていくには、犬から得られる励みと自らのモチベーションの両方があることが大切です。今回の解析結果から、犬の散歩を家族任せにしすぎず、犬の健康状態を維持することが日常の散歩を続ける基礎にあるのではないかと感じました。暑さも落ち着いて散歩のしやすい季節に突入です。お天気のいい日には少し長めの散歩をして、新たな散歩の楽しみ方を作ってみてはいかがでしょう?
(本記事はdog actuallyにて2016年10月13日に初出したものを一部修正して公開しています)
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【参考サイト】
・Science Daily